本研究は非負整数次数付き岩永-Gorenstein環上の整数次数付きCohen-Macaulay加群の安定圏における傾対象の構成法およびその準同型環の性質を調べることを目的としている。これまでの研究で一般の次数付き岩永-Gorenstein環の安定圏における傾対象の存在を判定する方法や傾対象の構成法を確立するまでには至らなかったが、特別な岩永-Gorenstein環の場合に対する研究成果や安定圏の構造に関連する研究成果を得た。 1. 昨年度までに源氏との共同研究によって、ある仮定の下で自明拡大岩永-Gorenstein環上の次数付き局所完全Cohen-Macaulay加群の安定圏が、0次部分環上の射影加群の有界複体のなすホモトピー圏の許容部分圏と三角圏同値になることを示している。本年度は次数付き局所完全Cohen-Macaulay加群の安定圏の性質を調べ、この圏がセーレ関手をもつことなどを証明した。2017年12月にワークショップ「岩永-Gorenstein代数とその周辺」を開催し、本研究の成果を説明した。 2. 昨年度までにRagnar-Olaf Buchweitz氏と伊山修氏との共同研究において、0次部分環が体である非負整数次数付き1次元可換Gorenstein環に対し、次数付きCohen-Macaulay加群の安定圏の重要な三角部分圏が傾対象を有する必要十分条件を、a不変量に関する条件で与えている。本年度は上記の応用や傾対象の準同型環の性質を調べ、標準次数付き1次元超曲面上の傾対象の準同型環の入射次元が2以下であることなどを証明した。これらの共同研究の成果をまとめた論文1編を準備中である。
|