本研究課題の目的は,志村多様体の数論幾何の研究を行い,その非可換類体論への応用を目指すことである.前年度までの研究成果を元に,今年度は研究をさらに進展させた.本研究課題の目的のために,2017年7月には「倉敷整数論集会」を主催して,志村多様体上の代数的サイクルの研究と関係の深い局所・大域Gan-Gross-Prasad予想,重複度1定理,相対跡公式,L関数の特殊値の平均,相対Langlandsプログラムについての研究打ち合わせ・情報収集を行った.志村多様体の数論幾何の研究を大きく進めることができた.伊藤和広氏,越川皓永氏と直交群に伴う志村多様体の数論幾何のK3曲面への応用に関する共同研究を行った.この研究を通して直交群に伴う志村多様体の研究手法について理解を深めることができた.この研究については,今後も研究を続行する予定である.石塚裕大氏,大下達也氏とFermat型4次曲線やKlein 4次曲線などの平面曲線に伴うGalois表現や,それらのMordell-Weil群についての共同研究を行った.Fermat型4次曲線の4等分点に定まるGalois表現の像を具体的に計算した.この成果が得られる以前は,具体的なmod 4 Galois表現が計算されている平面曲線の例はほとんど知られておらず,非可換類体論の観点からも重要な結果であると考えている.Fermat型4次曲線は特別な場合のモジュラー曲線と呼ばれる志村多様体のモデルにもなっているため,保型形式の合同と非可換類体論との関係についての興味深い例を与えると考えている.この研究については,今後も研究を続行する予定である.以上の研究を進めるため,整数論・代数幾何・保型表現論の関連図書を購入して,研究上の参考にした.また,関連する研究を行っている研究者を招聘して,研究打ち合わせを行った.
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