研究課題/領域番号 |
26800014
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
原 隆 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (40722608)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 整数論 / 数論幾何学 / 岩澤理論 / ガロワ表現 / 保型形式 |
研究実績の概要 |
本研究年度は、先ず虚数乗法を持つヒルベルト保型形式の岩澤主予想についての落合理氏との共同研究に於いて一定の成果が得られたため、論文にまとめて投稿した。この研究は、CM体の多変数岩澤主予想を段階的に特殊化することで、虚数乗法を持つヒルベルト保型形式の円分岩澤主予想を導き出すことを試みたもので、一般に特殊化の操作と相性が悪い特性イデアルについて、その特殊化操作の下での振る舞いを精緻に解析することが鍵となっている。本研究は、虚数乗法を持つヒルベルト保型形式の概通常肥田族の岩澤主予想を研究する上での基盤と位置付けられるべきものであり、肥田族の岩澤主予想については現在も落合氏と研究を継続中である。最終的には、この研究がガロワ表現の非可換変形族の岩澤理論への足がかりとなることを期待している。 また、本研究年度は2014年度に開催した第22回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』の報告集を編集し、出版することが出来た。本報告集は、当該研究の研究テーマである非可換岩澤理論の基礎部分から最先端の問題まで幅広く網羅したものであり、非可換岩澤理論の啓蒙および研究発展に大いに貢献するであろうことが期待される。 その他、今後の研究に向けて、ガウス和のオイラー系の理論や、高次代数群に対するp進L関数の理論などについて、研究並びに情報収集を開始した。また、北山貴裕氏との共同研究の推進も含め、低次元位相幾何学の諸問題について、整数論的観点(特にガロワ表現論や岩澤理論的な観点)からアプローチすることを引き続き試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
落合氏との共同研究は、着手時から論文投稿までの間に予想以上に時間を費やしてしまったが、これは研究の停滞によるものというよりも、研究の進行についれて研究着手当初は想定していなかった課題が次々に出現したことによるものであり、ヒルベルト保型形式の岩澤理論の根本的な理解を促進するのに大いに貢献することになったと考える。また、本研究年度の大きな課題であった整数論サマースクールの報告集出版も無事果たすことが出来た上、落合氏を含めた研究交流により当該研究の新たな課題を幾つか見出すことが出来たことなどを踏まえ、総体的に見て当該研究は概ね順調に進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
落合氏と研究を続けているヒルベルト保型形式の概通常肥田族の岩澤主予想については、先ずヒルベルト保型形式の概通常肥田族についての (特にp進L関数についての) 現在の研究成果があまりきちんと整理されておらず、岩澤理論で必要とされるような精緻な議論に耐えうるものでない箇所が幾つか残っているようであるので、先ずはヒルベルト保型形式やヒルベルトモジュラー多様体の幾何学についての根源的な研究に立ち返る必要があるように思われる。また、非可換岩澤理論については未だに未知の部分が多いが、そこにアプローチするだけの材料は色々と出揃っているように思われるので、古典的岩澤理論の手法も参照しつつ、かつ既存の理論に捉われない柔軟な姿勢で取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行手続きの関係上、第22回整数論サマースクール報告集の配送が次研究年度へ繰り越しとなった。そのため、予算項目の大きな割合を占める第22回整数論サマースクール報告集の出版関連経費のうち、配送経費分が次年度に繰り越されたことが、次年度使用額発生の主要な要因となってしまっていると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額発生の主要原因である第22回整数論サマースクール報告集の配送作業については2016年5月現在既に完了している。今年度は、資料情報収集のための出張費用は勿論、科研費申請時に計上していた研究効率向上のための物品購入の費用について、時間の関係でまだ購入できていないため、パソコン機器等の物品の購入でも予算を使用する予定である。
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