研究実績の概要 |
本研究の目的は, 簡約代数群上の保型形式が持つ様々な性質について古典的保型形式論と p 進的保型形式論の双方に基づく多角的視点から研究を行い, 更に, その結果から導出される数論幾何学的応用について研究を行うことである. 以下に, 平成27年度における研究成果の概要を述べる:
(1) 前年度に引き続き, 2次特殊線型群に対して, 土井公二氏, 肥田晴三氏, 前田芳孝氏の先行研究の一般化として, ある種の尖点的保型形式のトレース作用素による像が持つ代数性を用いて, 有理数体へ原始的保型形式の Hecke 作用素に関する固有値を添加することで得られる代数体と, 有理数体上に定義された楕円曲線のJ-不変量の特殊値を添加することで得られる代数体の間に相互法則と呼ぶべき跡公式が成り立つことを示した. (以上は, 尾白典文氏との共同研究である. )
(2) 高次分裂斜交群に対して, 前年度の研究を更に推し進め, p 進 Siegel Eisenstein 級数や p 進 Klingen Eisenstein 級数から得られる p 進測度を用いて, 2次特殊線型群や4次分裂斜交群の場合における p 進標準 L 関数の構成法を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2次特殊線型群に対する土井公二氏, 肥田晴三氏, 前田芳孝氏の結果については, ある程度一般的な形で相互法則を導出することができたが, その幾何学的な意味などについては未だ充分に研究できていない. また, p 進 L 関数の構成については, p 進 Eisenstein 測度からの引き戻しにより, 幾つかの特別な場合においては p 進標準 L 関数が構成できたが, 未だ一般の場合に対して適用できるような構成法は得られていない.
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