研究課題/領域番号 |
26800026
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
菊田 俊幸 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (60569953)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Siegelモジュラー形式 / テータ級数 / Sturm bound / テータ作要素 / Hermiteモジュラー形式 |
研究実績の概要 |
本研究では、SerreやSwinnerton-Dyer等が構築した一変数のモジュラー形式の「p進理論」や「合同の理論」の、(i) 多変数モジュラー形式の場合への拡張、(ii) それらのL関数の非可除性への応用、(iii) 「mod p特異モジュラー形式」の正体の解明、などを目指して実行してきた。当該年度においては以下の成果が得られた。 (1) 様々なタイプのL関数の非可除性への応用を念頭に、奇数重さの2次のSiegelモジュラー形式に対するSturm型の境界を具体的な形で与え、その境界が最良であることを示した。すなわち、最初のいくつかのFourier係数がmod pで消えていたら、全てのFourier係数が消える、その個数を具体的に与えた。 (2) Hermiteモジュラー形式の場合において、テータ作用素(ある種の微分作用素)の核の例を、Eisenstein級数やテータ級数からいくつか具体的に構成した。また、mod p特異モジュラー形式の例を、Eisenstein級数から構成した。 (3) Siegelモジュラー形式の場合において、mod pにおけるテータ作用素の核の重さと、素数pの間には、ある合同関係が成立することを示した。この結果の応用として、Boecherer-兒玉-長岡によって構成されたテータ作用素の核のファミリーが最良の重さであることを示した。またテータ作用素の核の具体例を任意のモジュラー形式から構成するために、モジュラー形式の群を別のものに移すような作用素(「ツイスト」の一種)を導入した。それらを用いて具体例を数多く構成し、研究代表者等がもつ予想の信憑性を確認した。また、新たな数学的現象をくみ取ることができた。 尚、(1)は竹森翔氏、(2)は長岡昇勇氏、(3)はSiegfiried Boecherer氏、竹森翔氏との共同研究における成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画は、可能と思われる範囲ではほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において、テータ作用素の核の例やmod p特異モジュラー形式の例がいくつか構成され、それぞれの性質が明らかになってきた。さらに具体例の構成方法についても整備されつつあり、ある程度統一的に扱うことができるところまで本研究が発展してきたと言える。具体例が豊富に構成できるようになった今、具体例を通してテータ作用素とmod p特異性を比較し関連性を明らかにする。 また、mod p特異モジュラー形式は全て、レベルpのテータ級数の一次結合で表現されると予想している。実際、Eisenstein級数から構成される例は全てそのようになっていることも分かった。これまでに揃えた道具を駆使して、この予想に証明を与える。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との打ち合わせのために海外に行く予定であったが、共同研究者が頻繁に日本を訪問してきたことにより、複数回国内で研究打ち合わせを行うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者との打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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