Serre等によるモジュラー形式の合同やp進理論の、Siegelモジュラー形式の場合への拡張、多変数特有の事象の発見を目指してきた。最終年度に得られた成果は以下の2点である。 1. 重さが素数pに比べ十分小さいときに、法pテータ作用素の核の元の重さが満たすべき性質が分かった。Boehcerer、長岡、竹森、兒玉、Schulze-Pillotなどにより既に構成されていた具体例が、最良のものであることが示された。また、多くの数値例を基に、これら重さに関する新たな予想を提唱した。(Boecherer氏、竹森氏との共同研究) 2. Hermiteモジュラー形式の場合に、法pテータ作用素の核および法p特異モジュラー形式の具体例を構成した。Eisenstein級数とテータ級数を用いて、2通りの例が得られた。(長岡氏との共同研究) 研究期間全体の主要な成果としては以下の成果が挙げられる。3. 本研究期間以前の研究より、Serreの結果の拡張が成り立たないSiegelモジュラー形式の例の存在を発見し、「法p特異モジュラー形式」と名付けた。それらの重さは特別な合同式を満たさなければならないことを示し、論文として学術雑誌に投稿していた。本研究期間内に、修正指示が与えられ対応した末に学術雑誌に掲載された。(Boecherer氏との共同研究) 4. 次数2、重さ35の井草のカスプ形式の、ほとんど全てのFourier係数が23で割り切れることを示した。報告者等の、その後のテータ作用素の核に関する研究を始めるきっかけとなった最初の例となった。(長岡氏、兒玉氏との共同研究) 5. Siegelモジュラー形式の場合に、法pカスプ形式が本当のカスプ形式と合同になることを示した。応用として、Klingen Eisenstein級数とカスプ形式が合同になるための素数pに関する規準が得られた。(竹森氏との共同研究)
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