研究課題/領域番号 |
26800028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
古宇田 悠哉 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20525167)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Heegaard 分解 / 写像類群 / 円盤複体 / 国際情報交換 韓国 |
研究実績の概要 |
任意の閉 3 次元多様体は,閉曲面により 2 つのハンドル体に分解される.これをその多様体の Heegaard 分解と呼び,閉曲面の種数をその Heegaard 分解の種数と呼ぶ.Heegaard 分解の複雑度は,Hempel 距離と呼ばれる非負整数ではかられる. Hempel 距離が 0 である種数 2 の Heegaard 分解を許容する 3 次元多様体は, 3 次元球面,2 次元球面と円周との直積,レンズ空間,およびこれらの連結和に限られる.これらの種数 2 の Heegaard 分解の写像類群の有限表示は,3 次元球面の場合についてのみ既によく知られていた.本年度は,S. Cho 氏との共同研究により,まず 2 次元球面と円周との直積について,種数 2 の Heegaard 分解の写像類群の有限表示を与え,論文として発表した.また,上記連結和で表される多様体に対しても,種数 2 の Heegaard 分解の写像類群の有限表示を与え,論文として発表した.これらはいずれも,Heegaard 分解に付随する特殊な円盤のなす複体へ群を作用させることにより得られた.レンズ空間に対しては,空間を表すパラメータによって同種の複体は連結になる場合とならない場合がある.これらを特徴付け,連結な場合の写像類群の表示を得た. また,3 次元多様体とその部分空間の研究の流れの中で,小沢誠氏と共同で,3 次元球面内に埋め込まれた種数 2 のハンドル体の外部が許容する本質的曲面の分類に関する論文を発表した.また,3 次元球面内の部分空間が「結ばれている」ことの必要十分条件を,その部分空間内の結び目の「相対的」な性質により記述した.これにより,結び目の交差数,トンネル数双方と関係をもつ不変量を構成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hempel 距離が 0 である種数 2 の Heegaard 分解の写像類群について,ほとんどの場合にその有限表示を得ることができている.また,残された場合についても,群が作用する複体を構成するなどの進展が見られる.
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今後の研究の推進方策 |
レンズ空間の種数 2 の Heegaard 分解について,初等円盤複体が連結である場合の写像類群の表示を論文にまとめて発表する.また,連結でない場合についても,写像類群の有限生成系を与え,論文にまとめて発表する.これにより,Hempel 距離が 0 である種数 2 の Heegaard 分解の写像類群の研究が一通り完結する.次に,Hempel 距離が 2 である Heegaard 分解について,「非交和曲線性質」を満たす曲線を基本にして複体を構成し,写像類群の作用を考察していく.種数が高い Heegaard 分解についても,種数が 2 の場合に培った手法を適用できる特別なクラスにおいて,その写像類群の有限表示を求める. また,一般に,種数 2 の Heegaard 分解を許容する 3 次元多様体には,結び目解消トンネルを許容する結び目のクラスが存在する.多様体が 3 次元球面である時にすでに知られている議論を拡張すると,Heegaard 分解の写像類群による円盤複体への作用の商は,その多様体内の結び目の結び目解消トンネルの同値類を頂点とする単体複体になり,この複体を通じて,これまで統一的に捉えるすべのなかった結び目解消トンネル全体の集合を俯瞰する.具体的には,結び目解消トンネルのパラメータ付けや,レンズ空間手術を持つ結び目の双対結び目の結び目解消トンネルがどのように散在するかなどについて,考察を行っていく.
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