研究実績の概要 |
向き付可能な任意の閉 3 次元多様体は,ある種数 g の閉曲面で切り開くことにより 2 つのハンドル体に分解される.この分解を種数 g の Heegaard 分解と呼ぶ.種数が 2 未満の Heegaard 分解に対しては,それを許容する 3 次元多様体,およびその分解の構造が完全に解明されている. 本研究の目的は,特に Hempel 距離が 0 である種数 2 の Heegaard 分解に対し,その写像類群(Goeritz 群)の有限表示を与えることである.これらのうち,3 次元球面についてはすでに有限表示が知られており,また,昨年度までに 2 次元球面と円周の直積,可約な 3 次元多様体について,論文発表を終えていた. 本年度は,まず,連結な初等円盤複体を許容するレンズ空間に対する Goeritz の有限表示を記述した論文を発表した.また,残されたレンズ空間,すなわち初等円盤複体が連結ではないレンズ空間に対する Goeritz 群の有限表示について,昨年度得られた結果を再度検証した上で原稿作成を完了し,arXiv への掲載と学術雑誌への投稿を行った.また,これらの結果について,アメリカで開催された AMS Sectional Meeting での招待講演で公表した.これで, Hempel 距離が 0 である種数 2 の Heegaard 分解の Goeritz 群に関するプロジェクトは完結したことになる. さらに,上記研究の応用として,2 橋結び目の (1,1) 分解に関するある種の一意性(小林・佐伯の定理)を,レンズ空間の初等円盤複体の理論を用いて証明した.いずれの研究も,S. Cho 氏との共同研究に基づくものである.
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