基本群の線形表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った. 最終年度は,3次元多様体内の本質的曲面のCuller-Shalen構成の拡張について研究し,構成される曲面のホモロジーがSL_n-指標多様体上の特別な関数の正則性によってどのように制限されるかを記述した.まず,Culler,Gordon,Luecke,Shalenによる結果の一般化として,トーラス境界を持つような3次元多様体に対して,構成される本質的曲面の境界スロープは境界上のループに付随するSL_n-指標多様体上の基本的な関数の理想点における正則性によって決まることを証明した.また,初年度に得た成果の一般化として,理想点が固定されたホモロジー類を代表するような本質的曲面を与えるためのトーション不変量に関する必要条件を提示した.この必要条件は,ねじれAlexander多項式の最高次係数が誘導するSL_n-指標多様体上の関数の理想点における正則性によって定式化される. 研究期間全体を通じて,高次元線形表現のモジュライ空間の幾何学を低次元位相幾何学に応用する研究の基礎付けを進めることができた.特に,古典的なCuller-Shalen理論の基礎的な成果をSL_n-指標多様体の場合に拡張し,一般化された理論によって全ての本質的曲面が捉えられることを明らかにした.更に,理論においてトーション不変量が有効に応用されることを見出し,数論的位相幾何学との関連研究の理解を深めた.
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