研究課題/領域番号 |
26800033
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
新田 泰文 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教 (90581596)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 定スカラー曲率ケーラー計量 / GIT安定性 / K-安定性 / 強K-安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、偏極射影代数多様体における標準計量の存在問題に対して、代数多様体のモジュライ理論におけるGIT-安定性の観点からアプローチすることである。今年度は、前年度に引き続き偏極射影代数多様体におけるGIT-安定性と標準計量の存在に関するいわゆる「Donaldson-Tian-Yau予想」に関連した次の事柄について研究を行った。 (1)偏極多様体の強K-安定性の不変性について、昨年度に引き続き研究を行った。偏極を定める正則直線束のエルミート計量が2つ与えられると、それら2つの"差"を考えることでテスト配位列が得られるが、このテスト配位列のDonaldson-Futaki不変量の評価を行った。 (2)前年度に得られた研究成果により、強K-安定な偏極多様体は常に漸近的Chow安定である。特にbalanced metricの列を許容するが、そのbalanced metric列が誘導するテスト配位列についてDonaldson-Futaki不変量の挙動を調べた。 (3)テスト配位列のDonaldson-Futaki不変量について、Chowノルムをケーラー計量の空間の上で定義されたエネルギー汎関数と関連付けた特徴付けについて考察した。 (4)Szekelyhidiによって導入され、Boucksom-Hisamoto-Jonssonらによって研究されている一様K-安定性について、強K-安定性と関連付けて考察した。特に、一様K-安定である偏極多様体におけるテスト配位列について、そのDonaldson-Futaki不変量の評価を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの研究成果により、我々の研究課題に関して今後の発展の基礎となり得るものが得られた。特に、強K-安定な偏極多様体は常にbalanced metricの列を許容するが、そのbalanced metric列が誘導するテスト配位列について、Donaldson-Futaki不変量の挙動を詳しく調べることができた。このような進展があったが、論文として纏めるに至らなかったためやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
強K-安定性の基礎的研究およびDonaldson-Tian-Yau予想における計量の存在問題に引き続き取り組むつもりである。近年ケーラー計量の空間の上で定義されたエネルギー汎関数の研究の進展が著しいので、これらの結果を我々の強K-安定性と結び付け、より強い結果を導けないかと考えている。 また、Donaldson-Tian-Yau予想に関する勉強会を行い、新たな知見を得るとともに問題への理解を深め、研究目的達成へのステップを進めたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は8月~11月にアメリカ合衆国のSimons Center for Geometry and Physicsで開催されたプロジェクト"Moduli spaces and singularities in algebraic and Riemannian geometry"に参加して、代数幾何学・微分幾何学の最新の研究動向を情報収集する予定であったが、報告者の業務が重なり中止せざるを得なくなり、そのため未使用金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度もこれまでの研究を継続し、強K-安定性とDonaldson-Tian-Yau予想の研究に注力するつもりである。そのために代数幾何学・微分幾何学の専門書を購入し、必要となる基礎知識の補強に役立てるつもりである。研究成果が纏まり次第、研究発表を行いその発信に努めたいと思っている。そのために、国内外で開催されるセミナーや研究集会に参加して、本研究内容の周知を図るつもりである。そのための研究旅費を次年度の研究費から充てたいと考えている。また、前述の勉強会で遠方から研究者を招聘する際に、必要があればその旅費や宿泊費として使用したいと考えている。
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