研究課題/領域番号 |
26800035
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横田 巧 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (70583855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リッチ流 |
研究実績の概要 |
本年度は当初の計画通り、主にリッチ流に関する研究を行った。特に、曲率が有界とは限らない非コンパクト多様体上の完備なリッチ流について調べた。一般に、曲率が一様に有界でないリッチ流は、最大値原理が成り立たないため扱いが難しく、残された未解決問題も多い。一般次元の閉多様体上のリッチ流の下で保たれる非負曲率条件が曲率が有界とは限らない非コンパクト多様体上の完備なリッチ流の下でも保たれることの証明や、一般次元でのリッチ流の強一意性定理の証明などを試みた。
並行して、昨年度までの研究を発展させる形で、半径の小さい CAT(1)-空間上の確率測度の重心に関する研究も行った。昨年度までに、半径の小さい CAT(1)-空間上の確率測度の重心の一意存在を証明していた。これは CAT(0)-空間で良く知られた事実の CAT(1)-空間への自然な拡張であるが、CAT(1)-空間では CAT(0)-空間のときのように距離関数の凸性が成り立たないため非自明となる。今年度は、CAT(1)-空間上で重心がその確率測度の全測度を持つ部分集合の閉凸包に含まれること等を証明した。これも CAT(0)-空間上の確率測度に対してよく知られた事実であるが、CAT(1)-空間では CAT(0)-空間のときのように明らかではなかった。また、この事実を用いて、半径の小さい CAT(1)-空間上の確率測度と凸関数に対して Jensen の不等式を証明した。これらの結果は昨年までに書き上げていた論文に追加し、その論文を再投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していたリッチ流に関する研究の他に並行して CAT(1)-空間の幾何学についての研究を行ったため、当初の計画よりはやや遅れている。その代わりに半径の小さい CAT(1)-空間上の確率測度の重心に関する研究において進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通り、リッチ流についての研究を行う。特に、閉多様体上のリッチ流の有限時間特異点の解析に関して、リッチ曲率が下に有界な空間の幾何学における最近の研究結果を用いて、何らかのアプローチを試みる。またそれと並行して、曲率が下に有界な Alexandrov 空間や CAT(1)-空間の幾何学の研究も行う。
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