研究実績の概要 |
DNAの中には結び目の形をしたものがあり,プリオン病はタンパク質分子の位相的構造が関連しているといわれている.本研究は,DNAの写真をみたときに,上下の情報がはっきりしないところがあったことを契機としており,これらの研究への応用が期待される.DNAはとても小さく写真を撮影することも大変難しい. 本研究は,上記のように上下の情報が不明な場合を数学的に考察するものである.結び目の影(すべての交点の上下がわからない状態のもの)から自明性(ほどけているかどうか)を考えることから始まった.その中で,一部の上下の情報がわかっている状態の図として,準ダイアグラムを定義した(R.Hanaki,Pseudo diagrams of knots, links and spatial graphs). 昨年の研究論文(R.Hanaki, On scannable properties of the original knot from a knot shadow)では,結び目の影から結び目の性質(結び目解消数,種数,組紐指数等)がどれくらい読み取れるかを考察した. 今年度は,その研究を推進し,交点数(前交点数)の低い結び目の影において現象を探るため,院生とともに表を作成した.その結果,上記の論文の命題を発展させることができている.また,上記の論文では結び目の影のみを考察対象としていたが,作成した表では,準ダイアグラムも含めている.したがって,この表は,今後研究を発展させていくうえで,基盤的な役割を果たしていく. また,多くの人に結び目理論や空間グラフ理論を知ってもらうために,理論を応用した知恵の輪の演示を行った.
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