研究実績の概要 |
Coarse幾何学および集合値関数の選択問題に関する以下の成果を得た. 1. 2000年, Dranishnikovは次の問題を提起した:「固有距離空間の漸近次元とそのHigsonコロナの被覆次元が一致するか.」 当該年度は, この問題に対して否定的な方向で研究を行った. まず, この問題に反例があるとすると, その空間は, 漸近次元に関する(いわゆる)遺伝的無限次元性を満たすことを確かめた. 多くの漸近次元が無限な距離空間は, 遺伝的無限次元性を満たさないことが確かめられる. 一方, 内周の増大するグラフの列の粗非交和は性質Aを満たさないことが知られている(Willett, 2011). この粗非交和が, 漸近次元に関する遺伝的無限次元性を満たすことを示した. 従って, この粗非交和がDranishnikovの問題の反例の候補として考えられるが, 実際に, この例がDranishnikovの問題の反例であるかは分かっていない. また, この例の他に遺伝的無限次元性を満たす空間があるかも分かっていない. この結果を論文にまとめ, 現在投稿中である. 2. 2点集合全体のなす超空間からの選択関数を弱選択関数という. D. Dikranjan氏(Udine大学), 野倉嗣紀氏(愛媛大学), 宮嵜和美氏(大阪産業大学)と共同研究を行い, 連続な弱選択関数をもつ擬コンパクト空間Xに関して以下の性質を明らかにした. まず, XのStone-Cechコンパクト化の剰余の濃度の上限と, 有限になるための必要十分条件を与えた. 次に, Xを3種類の空間の位相和として表現できることを示した. また, X上の連続な弱選択関数から生成される位相の種類を特定した. これら結果を論文にまとめ, 現在投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
内周の増大するグラフの列の粗非交和のHigson coronaの次元がどのようになっているかを調べる. ただし, Higson coronaの位相はよく分かっておらず, この問題は難しいことが予想される. Higson coronaやStone-Cechコンパクト化の先行研究を足がかりに, Higson coronaの位相的性質についても調べる. また, 漸近次元に関する遺伝的無限次元性は, 位相次元論との比較によって見つけることができた概念である. この他に, 漸近次元に関する新たな次元様相が見つかるか, 具体例を基に調べる.
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