研究課題/領域番号 |
26800041
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
渡邉 忠之 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (70467447)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Chern-Simons摂動理論 / 3次元多様体 / Morse理論 / 位相不変量 / 結び目 / 有限型不変量 |
研究実績の概要 |
チャーン・サイモンズ摂動理論は、ホモロジーが自明な3次元多様体(ホモロジー3球面)に対し、極めて精密な位相不変量を与えることが知られている。1次ベッチ数が高い一般の3次元多様体に対しては、チャーン・サイモンズ摂動理論の「同変版」が作れるかどうかが問題となっている。前年度までに、そのために必要となる同変プロパゲーターを、「アミダくじ的パス (AL-パス)」のモジュライ空間というものを考案し、具体的に与えた。今年度は、この具体的な同変プロパゲーターを用いた摂動理論の構成を試み、次の結果を得た。 (1) 円周上の曲面束である3次元多様体上の、ファイバー方向のモース関数族に対する変形不変量を得た。これは有理関数で色付けされた3価グラフの空間に値を持つ。これをモース関数族の取り方によらない3次元多様体の不変量にすることは今後の課題である。 (2) 円周上の曲面束である1次ベッチ数1の3次元多様体に対し、Lescop氏の2ループ同変不変量の組合せ的な公式を得た。この組合せ的公式を用いると、ある種の手術公式が容易に得られる。ただし、曲面束に限定しているため、手術の取り方がかなり制限されている。曲面束という制約をなくすことは今後の課題である。 (3) 3次元多様体内Mのnull-homologousな結び目の有限型フィルトレーションを手術により定義し、Mが円周上の曲面束で1次ベッチ数1の場合には、多項式で色付けされた3価グラフの空間から次数nの部分への自然な写像(手術で与えられる)が、nが2以下の時に単射となることを示した。これは一般の3次元多様体内のnull-homologousな結び目の有限型不変量による分類がなかなか精密であることを示している。 これらの結果に関する2つの論文を書き、arXivに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のA1(4ステップの1つ目)における、ベクトル場の変形に関する不変量が得られたこと。また副産物として、当初の研究計画では予期していなかった3次元多様体内の結び目の有限型不変量に関する結果が得られたこと。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、一般の3次元多様体に対するチャーン・サイモンズ摂動理論の「同変版」の研究を進める。また、研究目的(II)に挙げた、微分同相群のホモトピー群の研究を進めるため、代数トポロジーや特異点論等の多分野の研究者と会い、情報交換や議論をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品としてプリンターのトナーおよび図書の購入を予定していたが、トナーの残りがまだ十分にあることと、図書購入の計画を変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は、予定通り消耗品としてプリンターのトナーおよび図書の購入に使用する。
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