研究課題/領域番号 |
26800044
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
久野 雄介 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (80632760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 位相幾何学 / 写像類群 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、主に、曲面の基本群の「良い座標」である、シンプレクティック展開に対し、曲線の自己交叉の情報を反映した適切な条件が何であるかについて考察した。この考察の動機は、トュラエフ余括弧積の簡明なテンソル表示を得ることにある。 得られた成果は以下のとおり。(1)求める条件の候補となるべきある条件を一つ与えた。現在のところ、この条件は代数的に与えられるもので、幾何学的な背景は不明である。(2)曲面が種数1で境界を1つ持つ場合、計算機を用いてその条件を満たすシンプレクティック展開が存在するかどうか調べた。その結果、次数10までは条件を満たす様に構成できることが分かった。(3)曲面が種数0で境界を3つ持つ場合を考察し、発散コサイクルと、シェドラーの余括弧積を比較した。前者は柏原-ヴェルニュ問題に関係し、後者はトュラエフ余括弧積の次数商に一致する。再び計算機を用いて、ある次数まではシェドラーの余括弧積が発散コサイクルから導出できることを確認した。この計算は、柏原-ヴェルニュ問題とトュラエフ余括弧積の関連を示唆する。 なお、以上の研究は河澄響矢氏(東京大学)との研究協力により実施した。 その他の研究について。3価ファットグラフ・スパインの、曲面のホモロジー群に値を持つ不変量について研究を開始した。アール類と呼ばれる、写像類群のねじれ係数コホモロジー類を表す二種類のコサイクルの差としてこの不変量は定まり、ある種の二次不変量である。不変量の表示公式、非自明性、スピン構造との関係などの結果が得られた。以上は論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トュラエフ余括弧積のテンソル表示を得るための、計算機を用いた考察は区切りの良いところに達した。考察した条件の幾何学的な背景が不明な点には不満が残るが、有力な仮説であることははっきりしてきたと思う。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考える。 3価ファットグラフ・スパインの、二次不変量に関する研究が開始できたことは良かった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、平成26年度に考察したシンプレクティック展開に対する条件が、求めるべきものであるという作業仮説にもとづいて研究を進めたい。特に幾何学的な考察を積極的に行い、この条件の理解を進めたいと考えている。 3価ファットグラフ・スパインの二次不変量に関する研究は継続していきたい。
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