研究実績の概要 |
本研究の大きな目標の一つは、曲面上の曲線の自己交差を測るトュラエフ余括弧積と呼ばれる演算について、簡明なテンソル表示を得ることである。平成28年度は、昨年度までの研究において見出された、トュラエフ余括弧積と柏原-ヴェルニュ問題との関係について大きな進展があった。具体的には、種数0の曲面については、柏原-ヴェルニュ問題の解を用いると、トュラエフ余括弧積のテンソル表示がシェドラーの余括弧積に一致するということが証明された。また、柏原-ヴェルニュ問題の二番目の条件(ある種のコバウンダリー条件)について、位相幾何学的な解釈が得られた。また、高種数の曲面に対する一般化が可能であることも判明した。種数0の場合については論文を投稿中であり、正種数の場合については論文を準備中である。以上の研究は河澄響矢氏(東京大学), Anton Alekseev氏(ジュネーブ大学), Florian Naef氏(ジュネーブ大学)との研究協力により実施した。 その他の研究について。 (1)福原真二氏(津田塾大学)との研究協力により、カウフマン括弧積を用いて曲面上の曲線の自己交点数を評価する研究を行った。現在、論文を投稿中である。 (2)Gwenael Massuyeau氏(ストラスブール大学)との研究協力により、一般デーンツイストと呼ばれる、曲面上の曲線に対する構成を幾何学的に理解するための試みを行った。具体的には、ホモロジーシリンダーと呼ばれる3次元におけるある構成により、一般デーンツイストのしかるべき意味での第一次近似が得られた。
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