研究課題/領域番号 |
26800046
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
長郷 文和 名城大学, 理工学部, 准教授 (30513634)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | knot contact homology / character variety / ghost character / minimal element |
研究実績の概要 |
まず,前年度は技術的な問題で先送りとなっていた『結び目の幽霊指標(ghost character)』について,表現論的な解釈を行うことにした.元々,幽霊指標は,研究者代表者らの研究を用いて『結び目の指標多様体のトレースフリー断面が,ある種の二重分岐被覆構造をもつための障害』として幾何的に定義され,L. Ng 氏により導入されたノットコンタクトホモロジーと,3次元球面の結び目に沿った二重分岐被覆の指標多様体Xとの対応(Ng予想)について,その予想の反例を生成すると期待されている重要な対象である.まず定義から,幽霊指標は,結び目外部空間の二重巡回被覆が誘導する結び目群の部分群に由来すると解釈される.特に,その部分群のメリディアンの2乗が生成する正規閉包による商のSL(2,C)表現を考えると,結び目群の表現から誘導されない,固有な表現が存在する可能性がある.その表現の指標が幽霊指標を生成することがわかるが,一般に,この逆は成立しないと推測される.そこで,前年度の計算機実験を基に,ある結び目群の部分群に注目し,そのSL(2,C)表現の指標が幽霊指標の値と一致するものを構成した.これが実際にXの元を与えるかについては,現在検証中である.上記の成果については,その一部を2月に開催された琉球結び目セミナーで講演した.参加者からの有益なコメントがあり,活発な議論もできた. また,本研究は,指標多様体を用いた結び目の極小元の研究に応用できる.これに関して,以前よりまとめていたTexas大学Dallas校のAnh T.Tran氏との共同研究の成果が,Osaka Journal of Mathematicsに掲載されることとなった.現在,Tran氏,明治大学の鈴木正明氏と,より広い結び目のクラスでの極小元について共同研究を進めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は技術的な問題から先送りになった研究もあり,若干の遅れが見られたが,今年度はその遅れも取り戻し,ほぼ研究計画通りに遂行できたことが,おおむね順調に進展していると判断される主な理由である.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究代表者の研究により,幽霊指標が結び目(外部空間)のどのような位相情報を持っているかについて,より深い検証が必要であることが分かってきた.この視点から,来年度は,現在検証中である幽霊指標の性質の確認とその深化,Ng氏の予想についての研究を進めたいと考えている.また,過去に研究集会で講演した研究成果について,未だ論文として出版していないものがいくつかあるため,それらの論文執筆も行いながら,研究を推進したいと考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末の急な校務により,出張の変更が必要となり,その変更手続き等から予定していた旅費との差額等が発生し,次年度の使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品を購入する予定である.
|