研究課題/領域番号 |
26800050
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
植木 誠一郎 茨城大学, 工学部, 准教授 (70512408)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Bergman空間 / Fock空間 / チェザロ型積分作用素 / 合成作用素 |
研究実績の概要 |
Bergman-Fock型関数空間に対する特徴付け問題を中心に、解析関数の定義域の一般化、重み関数の一般化を試みながら評価不等式の確立を目指す研究を行った。この種の研究は本課題においては、積分作用素の解析手段として期待されるものであり、同値ノルムによる評価不等式は解析関数空間の個々の性質についての情報を与えてくれるものである。 N変数のFock型空間に対する高階微分作用による特徴付けとそれに付随する同値ノルム評価を実現する不等式の研究を行った。通常の偏微分作用の他にRadial Derivativeを使った同値条件が明らかとなり、それらの導関数に対するLp-平均の挙動によってもFock型空間が特徴付けられることが分かった。この同値条件を応用して、Fock型空間に作用するチェザロ型積分作用素の有界性・コンパクト性を定めるSymbol写像の性質を明らかにできた。本研究成果は、雑誌:Integral Equations and Operator Theoryに掲載された。 A.K.Sharma氏と共に上半平面上のBloch型空間に作用する合成作用素を特徴付ける研究を行った。単位円板の場合とは異なり、任意の解析関数は有界な合成作用素を構成しないこと、コンパクトな合成作用素は存在しえないことを明らかにした。 T.Mengestie氏と共に一般化された重み関数で定義されるFock空間を導入し、その関数空間に備わる標準ノルムと同値なノルムに対する評価不等式に関する研究を行った。重み関数についてある条件を課すことで同値ノルムによる評価が得られたが、その仮定が最適かどうかの検証が残っている。また、この場合についての積分作用素の解析が可能となり、従来のFock空間に対する結果に類似した特徴付けが得られた。 上記2つの共同研究による結果は何も然るべき学術雑誌に投稿し、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積分作用素のノルム評価を目的とした微分作用を利用した関数空間に対する同値ノルム不等式の確立を目指してきた。前年度得られた1変数の結果をもとにして多変数の場合へ拡張された不等式が確立できた。また、研究対象となる解析関数の定義される領域の一般化(上半平面など)と関数空間を定義する重み関数の一般化への方向性が得られた。当初予定していた通り、積分作用素を解析するための手法・知見が揃いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究において、研究の対象としているフォック空間の重み関数を一般化することがソボレフ型のフォック空間の導入に繋がることが判明したため、微分作用素とフォック空間の関連を明確にするためにも、この重み関数の一般化する問題を考え、必要な同値ノルム不等式の確立を目指す。また、多変数の解析関数からなる関数空間を考察する場合は通常の微分作用素だけでなくラプラシアンやグラディエントなどを利用した同値ノルムも考えられる為、先ずは新たな同値ノルム評価不等式の導出を目指すことになる。ここで得られる評価を応用するために、積分作用素とラプラシアンとの親和性を調べる必要があるが、基本的な合成作用素から始めて段階を踏んで一般化していく。この際に合成作用素もしくは荷重合成作用素に対する特徴付け条件、変数変換公式などが必要になるはずなので、必要に応じて合成作用素の研究にも関わっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属変更の手続き(公募面接、引越準備)により計画していた国内出張(研究打ち合わせ:1回、研究集会:1回)を中止しなければならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分と合わせて、主に研究課題に関連する図書(洋書)の購入に充てたい。
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