解析関数空間に対する特徴付け問題、およびそれらの応用として生じる合成作用素・積分作用素の基本性質を作用素構成因子の持つ函数論的な性質で特徴付けることを目標とする研究を行った。本研究課題において、解析関数空間の特徴付け問題は具体的に定義される線形作用素の解析手段として期待される同値ノルムによる評価不等式の確立が主たる目標である。合成・積分作用素の解析は解析に必要な試験関数の構成など、解析関数空間に固有な特徴に大きく依存する研究である。いずれの研究も解析関数空間の個々の性質についての情報を与えてくれるものであるため、解析関数空間論の分野では広く研究されているものである。 N変数の単位球上で定義されるZygmund空間を導入し、この空間はRadial Derivativeの高階微分を帰納的に定義した微分作用素の挙動により特徴付ける研究を行った。研究過程において、この微分作用素の挙動とZygmund空間のノルムとを関連付ける同値ノルム評価不等式まで確立できた。今後は、Radial DerivativeのLp平均の挙動やCarleson測度の挙動によるZygmund空間の特徴付けを目指したい。 1変数の上半平面で定義されるBloch型空間を導入し、同じく同値ノルムによる評価不等式などを見出した。上半平面上のBloch型空間では合成作用素・積分作用素の研究があまり行われていない。今回、A.K.Sharma氏とともにBloch型空間上の合成作用素・積分作用素の特徴付けに関する研究を進めた。Sharma氏との共同研究の結果(一部)は雑誌:Mediterranean Journal of Mathematicsに掲載された。
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