研究実績の概要 |
ランダム環境中の分枝ランダムウォークの研究を進めることにした. 分枝ランダムウォークは生物模型の一種で生物が出産と空間の移動を行う様子を記述する模型として知られている. ランダム環境中で考えることにより時期や地域ごとに食糧問題や気候の変動により出生率が変動することを記述することができるようになった. ランダム環境中の分枝ランダムウォークはディレクティドポリマー(DPRE)と非常に高い関連があり, 問題の解決のためにDPREの研究に着手した. ランダム環境中のディレクティドポリマーは溶媒中に時空間に配置された不純物が高分子の形状へ与える影響を調べる模型であり1980年代に物理学者のHuse, Henleyらによって導入された. DPREの挙動は空間次元や温度によって全く異なる挙動をする(相転移が起こる)ことが知られており, 特に1次元, 2次元では常に局在化が起こることが知られている. この相転移を特徴付ける方法として自由エネルギーと呼ばれる物理量が用いられる. 近年では1次元空間におけるDPREとKPZ方程式との関係が注目を浴びており, 特にDPREがKPZのuniversal classに入るということが予想されている. その予想の一部として自由エネルギーの高温度での挙動にKPZ方程式の解の自由エネルギーが現れるというものがある. 2016年度はこの問題に着手し問題を解決することに成功した. 手法としてはDPREを時間に依存して高温にしたものの弱収束極限がKPZ方程式のCole-Hopf解になることを議論の中心として用いた.
|