研究課題/領域番号 |
26800053
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
堀田 一敬 山口大学, 理工学研究科, 講師 (10725237)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レブナー理論 / 等角写像 / 擬等角写像 / シュラム・レブナー発展 |
研究実績の概要 |
1.本年度はまずグメニュク教授とChordalレブナー関数に関する基本的性質に関する共同研究を進めた.Radialレブナー関数に関しては古典的な結果が多く知られているものの,Chordalに関しての研究はあまり進んでいない.本研究ではRadialにおける基本的性質の多くがChordalでも同様に成り立つ事,特にchordalレブナー関数の擬等角拡張性について示すことができた.本研究は論文として国際専門誌へ投稿され,現在査読審査中である. 2.昨年度に得られた統一レブナー理論におけるレブナー関数の近似定理を用いて,レブナー関数の擬等角拡張性の問題に取り組んだ.Herglotz関数と閉単位円板上の可測関数であるDenjoy-Wolff関数(以下DW関数)のペアとレブナー関数との間には本質的な1対1対応がある事が知られている.1972年にBeckerはRadialレブナー関数において,Herglotz関数の像のcompact集合が常に右半平面に存在するとき,対応するレブナー関数は複素平面上への擬等角拡張を持つ事を示した.更に2015年には上記のようにChordalに関して同様の結果が得られた.この2つの結果を用いて近似の議論に持ち込むことにより,DW関数への一切の余分な仮定を取り除いた状態でも同様に擬等角拡張の十分条件が得られる事を示すことができた.本結果を受けて現在論文執筆中であり,平成28年度には投稿される見込みである. 3.海外のゲストの日本招聘は日程的に折が合わず,代わりにこちらが出向く事となった.ドイツ・スペイン・ノルウェーの共同研究者達のもとに滞在し,研究を推し進めた.また上記の研究結果をもとに,それぞれの大学で講演をした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同様に多少の軌道修正はあったものの,おおむね順調に進んでいる.研究実績の概要にもあるように,2つの大きなプロジェクトに着手し,それぞれにおいて好意的な結果を得ることができた.海外の研究者の招聘は日程の都合もありうまくいかなかったが,その代わりにこちらが彼らの元に出向き,共同研究を進めることができた.さらにその研究交流の中で新たな研究の着想を得ることができた.これに関しては次の「今後の研究の推進方策」において述べる.
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今後の研究の推進方策 |
まずはもともと遂行予定であった,レブナー理論の国内普及に関して力を入れる.具体的には,レブナー理論に関する日本語のサーベイを執筆し,何らかの手段で公開する予定である.現在レブナー理論の国内研究者は多くなく,若い研究者の育成ができる状況ではない.本概説はそれを考慮し,幾何的解析学の基礎から現代レブナー理論まで効率よく学ぶことのできるものにする. 研究に関して,平成26年度に得られた近似定理を応用することで,簡単なモデルの結晶成長モデルをレブナー関数を用いて表現するための着想を得た.このアイデアをもとに昨年度共同研究者らと議論を重ね.今後本格的にこの方向で研究を進めるべきだという確信を持った.現在ドイツのシュライジンガー教授,ノルウェーのグメニュク教授とそれぞれに独立した研究プロジェクトを立ち上げ,議論を重ねているところである.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた山梨英和大学への国内出張が,日程の関係で次年度に持ち越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に山梨英和大学への国内出張を行う.
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