研究課題/領域番号 |
26800057
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
足立 真訓 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30708392)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レビ平坦曲面 / 複素解析幾何 / 葉層構造論 / 多変数関数論 / ポテンシャル論 / ハーディー空間 / モンジュ・アンペール測度 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
多変数関数論における重要な未解決問題に、Cerveau予想および一般化されたLevi問題がある。いずれもLevi平坦境界の領域上の解析に関わる点に主要な問題があるが、多変数関数論の既存理論は、強擬凸領域上の解析を踏まえ発展してきており、これらの問題に直ちには適用できない。我々は、Levi平坦境界の領域を「0次」の強擬凸性が退化した領域とみなし、その許容する「高次の」強擬凸性を定式化することで、この困難を克服しようと試みている。 我々は、平成26年度までの研究において、Levi平坦境界の領域において1次の強擬凸性を定式化すると考えられるDiederich-Fornaess指数 (DF指数) について、基礎的な制約不等式を得ていた。平成27年度は、この不等式の等号が成立する限界事例、すなわち、DF指数が極大となる事例に着目し、研究を行った。平成27年度に得られた主要な研究成果は、ある種の弱擬凸領域において、DF指数の極大性がその領域のHardy空間の消滅、特にLiouville性を導くことを明らかにした点である。特に、この結果は閉リーマン面上の正則円板束のLiouville性に関するFrankelの問題に対して、部分的な解答を与える。また、本研究で用いられる手法により、Levi平坦境界の領域における、DF指数の極大性と、境界のLevi葉層の調和測度のルベーグ測度に対する絶対連続性の対応関係(足立, 2015)の別証明も得られた。この別証明は、DF指数とDemailly (1987) におけるMonge-Ampere測度の解析との関連を示唆している。本研究結果は、現在、学術雑誌への投稿を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次の強擬凸性に対応する概念としてDF指数に着目をしたことにより、複素領域のLiouville性という古典的な問題に関わる成果が得られた。本研究開始以前から我々の仮説からCerveau問題・一般化されたLevi問題以外の問題へのフィードバックを期待してはいたが、この研究成果は実際予想していなかった進展であった。さらに、Monge-Ampere測度との関係が判明した点も、複素領域の標準的な定義関数を探すという点で今後活用できると期待できる。高次の強擬凸性に関しても、de Bartolomeis-Iordan (2015) によるCerveau予想へのアプローチに触発され、Levi平坦面の剛性問題に関して一定の進捗を得ることができた(Texas A&M大学のBiard氏との共同研究)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの仮説・研究計画の下、既知のLevi平坦境界の領域に対する事例研究を継続する。特に平成27年度の研究成果を踏まえ、Diederich-Fornaess指数の評価手法の研究には、Monge-Ampere方程式を用いた手法も検討したい。また、Levi平坦面の剛性問題へのアプローチを通して、高次の強擬凸性の定式化の研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い、国内旅費の計算の起点が変わったため、必要な旅費の金額が大幅に少なくなった。一方で、研究環境の再整備が必要となったことに伴い、物品費が当初計画よりも必要となった。差し引き、全体として残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に生じた旅費の残額を、平成28年度以降の国外旅費・招聘旅費にあてることで、共同研究者との研究打ち合わせの頻度を増やし研究を加速したい。
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