多変数関数論における重要な未解決問題に、Cerveau予想および一般化されたLevi問題がある。いずれもLevi平坦境界の領域上の解析に関わる点に主要な問題があるが、多変数関数論の既存理論は、強擬凸領域上の解析を踏まえ発展してきており、これらの問題に直ちには適用できない。我々は、Levi平坦境界の領域を「0次」の強擬凸性が退化した領域とみなし、その許容する「高次の」強擬凸性を定式化することで、この困難を克服しようと試みている。 我々は、平成28年度までの研究において、Levi平坦境界の領域において1次の強擬凸性を定式化すると考えられるDiederich-Fornaess指数について、基礎的な制約不等式を得た。そして、不等式が等号成立するようなある具体例において、その上の正則関数を明示的に構成し、重み付きBergman空間の無限次元性を全ての次数で確かめた。 平成29年度は、この結果を他の具体例に対して拡張する研究を行った。そして、上述の具体例をコンパクト複素曲面内の領域として標準的に実現した時、その補集合たる領域に対しても、重み付きBergman空間が全ての次数で無限次元となることを明らかにした。本研究結果は、学術雑誌への投稿を準備中である。さらに、この補集合たる領域は、双曲閉曲面のGrauert tube(同次複素Monge-Ampere方程式の解が付随する)と呼ばれる開複素曲面と双正則同値であることを明らかにした。Grauert tube に関してはこれまで多くの研究がなされているが、Levi平坦境界の領域という観点での研究は行われてこなかったようである。本研究結果をまとめた論文は、平成29年度に開催された国際研究集会「KSCV12 Symposium」の論文集 (Springer Proc. Math. Stat. より刊行予定) への掲載が決定している。
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