研究実績の概要 |
周遊理論およびその周辺分野に関連するテーマについての研究を通して,周遊理論に関する新しい基礎理論の発展と応用への展開をもたらすことを目的としている. 平成27年度は特に,屈折レヴィ過程に対する脱出問題の研究が進展した.この研究は野場啓氏(京都大学)との共同研究である.屈折レヴィ過程とは,あるレベルの上下で二つの負スペクトルレヴィ過程を切り替えてできるマルコフ過程を意味している.Gerber--Shiuは屈折複合ポアソン過程の脱出問題を研究し,保険数学の理論に応用した.Kyprianou--Loeffenはドリフトのみ異なる屈折レヴィ過程を確率微分方程式を用いて構成し,その脱出問題を研究した.本研究では,ガウス部分なしの仮定の下で,一般化屈折レヴィ過程を周遊理論を用いて構成し,その脱出問題を研究した.その結果,Kyprianou--Loeffenの結果を拡張することに成功した.また,小さい跳びを除いてできる屈折複合ポアソン過程による近似を示した.これらの結果は投稿準備中である. また,Skorokhod, Mao, Yin, Zhu, Yuan, Zhangらにより近年盛んに研究されている切替拡散過程の理論について,院生の藤村,鳥生,中澤の協力により,近年の研究動向の把握に努めた.切替拡散過程の理論への周遊理論の応用は,本研究の目的に沿う新しい研究対象となり得ることを見出すことができた. また,Thomas Simon氏(リール第一大学)を招聘し,レヴィ過程に関係する確率変数の分布の無限分解可能性の研究について講演を依頼した.さらに,この研究上で重要なベルンシュタイン関数の理論について議論し,興味深い知見を得た.
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