研究課題/領域番号 |
26800061
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
林 正史 琉球大学, 理学部, 助教 (90532549)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 確率解析 / 境界条件付確率微分方程式 / 不連続な係数の確率微分方程式 |
研究実績の概要 |
コハツ-ヒガ氏(立命館大学)とAurelien Alfonsi 氏(Ecole Nationale des Ponts et Chaussees) との共同研究で、境界条件付きの確率微分方程式の数値計算に関する研究を行った。現在のところは、領域は一次元の半直線で境界では反射条件を付けたものを考えた。この場合は確率微分方程式に局所時間のようなものが現れる。そのため、マリアバン解析などの従来の手法を用いて解析するのは難しい。そこで、この共同研究では偏微分方程式の解の構成方法として知られているパラメトリックスの手法を応用して基本解の近似解を構成し、その近似解を確率的に表現しなおすことで、数値計算を行うことを目標としている。 現在、確率微分方程式の解の密度についは、数値計算まで行うことができた。しかし応用も考慮すると、さらに確率微分方程式の解と局所時間過程を組にしたものの密度についても数値計算を行えることが望ましい。このような場合にも現在までに近似式の構成をすることはできた。今後、数値計算に向けた調整を行っていく予定である。 別の研究として特異なドリフト項を持つ確率微分方程式の解の密度関数についても研究を進めた。現在までにコハツ-ヒガ氏と結城郷氏(立命館大学)との共同研究により、密度関数の滑らかさや連続性に関する研究を行ってきた。そこでの研究はドリフト項が、あるソボレフ空間に属することを仮定して、基本解がどのクラスのソボレフ空間に属するかを議論した。そのため、大域的な可積分性の議論に終始してしまった。そこで、特異なドリフト項を持つ確率微分方程式の解の密度関数についても、パラメトリックスの議論のような近似解を構成することを考えた。 現在までに、拡散項がブラウン運動の場合だけではあるが、近似解を構成し熱核の評価などを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
境界条件付きの確率微分方程式の数値計算については、当初に計画していたものについては達成できた。研究を進めていくうえで議論した結果、局所時間も含めた形で数値計算を行った方が良いのではないかということになり、もう少し一般化したもので研究の報告、論文発表を行おうと考えている。
ドリフト項が特異であるような確率微分方程式については、これまでの研究から大きく方針を転換した。これまでの研究では特性関数の大域的な可積分性を示すことで、密度関数の連続性や滑らかさを調べようとしていたが、この方針はなかなかうまくいかないようである。とくに高次元の場合は非常に難しく、コハツ-ヒガ氏と結城郷氏(立命館大学)との共同研究では高次元の具体的な例をあげることができなかった。そこでこの方針はあきらめて、近似解を構成することを考えた。この近似解の表現から熱核の評価などの結果が得られそうである。
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今後の研究の推進方策 |
パラメトリックスを用いた数値計算の研究では、局所時間も考慮に入れた近似式までおおむね計算できている。今後は数値計算に向けて調整し、論文にまとめていく予定である。
ドリフト項が特異であるような確率微分方程式の研究についは、拡散項がブラウン運動でないような場合についても近似式を構成できそうである。その近似式の表現から、熱核の評価や短時間での大偏差原理などの結果が得られるのではないかと考えている。 またドリフト項が特異であるような確率微分方程式は統計力学のモデルとして、近年研究がなされている。特にTagged processの時間発展での極限定理に本研究が応用できるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を買うための費用が少し余った。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度、研究のために必要な消耗品の購入に使用する。
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