原点で反射するという条件を付加した、境界条件付きの確率微分方程式の解の分布の研究を行った。特に、パラメトリックスによる基本回の近似公式を数値計算に応用した。この研究は紀要論文として公表される予定である。 また境界条件付きの確率微分方程式の解と、原点での局所時間の組に関するパラメトリックスの手法についても研究を行った。拡散係数がヘルダー連続性で有界かつ非退化で、ドリフト項が有界関数であるという仮定のもとで解の近似公式を得ることが出来た。これまでに研究されているパラメトリックスの手法では、密度関数が存在する場合が想定されているが、この研究では局所時間の分布がルベーグ測度に対して特異となっている。このような特異性をもつ分布にたいしてもパラメトリックスの手法が適応できることを示したことが、この研究の一つの特徴と言える。特に解と局所時間の組の分布をルベーグ測度に関して特異な分布と絶対連続な分布に分解し、それぞれの分布に関して近似公式を与えることができた。局所時間の分布がルベーグ測度に関して特異になるときは、「原点に到達したときに消滅する」という条件を付加した確率微分方程式の解の分布と同分布になることが分かる。このとき、局所時間の分布はディラックのポイントマスとなるが、解の分布はルベーグ測度に関して絶対連続になる。この密度関数の初期値に関する微分可能性を示すこともできた。また、局所時間と解の組の分布が絶対連続である場合にもその密度関数の初期値に関する微分可能性を示すことが出来た。現在、この研究を論文にまとめているところである。
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