研究実績の概要 |
本年の研究実績は以下の2つである: 1.戸田格子方程式と呼ばれる行列タイプの常微分方程式の、相空間の正値性について研究した。一般に、一口に「方程式の相空間の正値性」と言っても、考えている方程式、問題によって、どの性質を「正」と呼ぶかは、必ずしも明らかでない。本研究では、戸田方程式の正値性を論じた論文「Yuji Kodama, Lauren Williams, The Full Kostant–Toda Hierarchy on the Positive Flag Variety, (Comm. in Math. Phys.) 2015, Vol. 335(1), pp 247-283」の結果を発展させ、「行列のtotally positivity = 戸田方程式の正値性」との考えの元、戸田方程式の相空間の正値性を論じた。その副産物として、戸田方程式のスペクトル曲線に付随する一般化ヤコビ多様体の正部分(positive part)を定義し、一般化ヤコビ多様体の正部分と三重totally positive matrix との間の、興味深い全単射写像を構成することに成功した。 2.1.の部分で得られた全単射は、単に多項式写像であるだけでなく、負号を含まない多項式写像(subtraction-free polynomial map)であることを証明した。Subtraction-free polynomial map は、組み合わせ論、トロピカル代数との関係が深く、今後の応用が期待される。
|