研究課題/領域番号 |
26800063
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高橋 弘 日本大学, 理工学部, 助教 (30413826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ランダム媒質 / 自己相似確率過程 / 国際研究者交流 / スペイン / マドリッド |
研究実績の概要 |
媒質の影響を受ける多次元拡散過程は,特異な漸近挙動が現れることが予想されている。そこで,劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程について,その漸近挙動の性質を考察した。この問題を確率論の枠組みで定式化すると,二重のランダムネスを扱うことになる。一つは媒質が固定されたときに粒子の動きが持つランダムネスであり,もう一つは媒質のランダムネスである。 平成26年度の研究では,独立した1次元の拡散過程の直積過程で多次元拡散過程を構成し,その性質を調べることで,安定レヴィ過程を含むよう,より一般的な自己相似性を持つ媒質に対して,漸近挙動の解明を目指していた。慶應義塾大学 田村要造教授と東北大学 楠岡誠一郎助教との共同研究により,ランダム媒質の条件から多次元拡散過程の再帰性・非再帰性が判定できることを示した。この結果に関する論文は,現在,投稿中である。 また,上記の多次元拡散過程とは異なるモデルについても同様な問題を考察した。媒質のモデルとしてガウス確率場を与え,その中を動く拡散過程の漸近挙動についても,田村氏,楠岡氏との共同研究を通じ,多次元拡散過程の再帰性を与えるランダム媒質の十分条件を与えた。この結果に関する論文も,現在,投稿中である。 これらの結果は,自己相似確率過程の一般論を適応することで,ランダム媒質の条件から多次元拡散過程の漸近挙動の性質について,見通しよく説明が与えることができたという意味で,ランダム媒質中の多次元拡散過程の研究に対し,進展を与えた。また,この成果に関連する結果は,マドリッドで開催された研究集会「The 10th AIMS Conference」のプロシーディングに掲載されることが決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程の漸近挙動について,媒質の条件からの説明を与えることを今年度の目的としていた。研究を進め得られた結果として,レヴィ過程をモデルとする場合とガウス場をモデルとする場合の2種類のランダム媒質についての条件がわかり,この内容を論文にまとめ,投稿することができたため。。また,(i)漸近挙動を極限分布の解析を通じて解釈する,(ii)弱い従属性を持つランダム媒の中の拡散過程に関する漸近挙動の解析,という新たな研究に着手することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
劣拡散的なランダム媒質中の多次元拡散過程の極限定理についての研究を進める。1次元の場合は,ランダム媒質のモデルとなる確率過程の性質を調べることで結果が得られているが,多次元の場合は未解決な問題である。そこで多次元の確率過程と確率場に関して,その性質を調べることで,多次元拡散過程の極限定理を示すことを目指す。 また,弱い従属性を持つ確率過程をランダム媒質とする場合の研究についても考察する。ランダム媒質の問題を数学的な解析を行うにあたり,この定式化は物理現象をモデル化する際に,自然な設定と思われるが,その研究は多次元だけでなく,1次元の場合も進んでいない。そこで,この方向からもランダム媒質の研究に対し,進展を与えられるよう研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,旅費の部分で当初参加予定だった研究集会への参加が都合により不可能となった。そのため,次年度への繰り越しが生じた。また,物品費については,理論的な側面を持つ研究を数値計算に先行して行うなど,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は繰り越し分と合わせ,当初の計画通り旅費,計算機,図書等の消耗品などに,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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