研究実績の概要 |
今年度は,グループ分けされた感受性個体,感染個体,回復個体の数の時間変化をモデル化した multi-group SIR 感染症モデルにおいて,平衡点の大域漸近安定性を得るための解析手法を土台として,感染個体に関して単調増加である仮定を与えた非線形接触項だけでなく,relapse of infection (感染から回復した直後の再感染) を考慮したモデルにおいて,感染平衡点が大域安定であるための十分条件を導出した.本結果は,2014 年に出版された査読付き国際誌論文である Muroya, Li, Kuniya, Complete global analysis of an SIRS epidemic model with graded cure rate and incomplete recovery rate, J. Math. Anal. Appl. 410 (2014) 719-732 の拡張となる.特に,回復個体の免疫損失率が小さい場合は,Lyapunov 関数法 (関数の正定値性およびその微分係数の符号に着目して,平衡点が大域吸引的であるための条件を求める方法) に基づく証明,大きい場合は単調反復法 (各関数の極限の評価値に関する数列の収束条件を求めることで,大域安定性条件を得る方法)に基づく証明を与えるだけでなく,他のモデルに応用可能となる系のパーマネンスを示すための新たな証明アイデアを与えた.
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