研究課題/領域番号 |
26800067
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 政尋 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30587895)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ / シース / 一般化された Bohm 条件 / Euler-Poisson 方程式 / 平面定常解 / 安定性 |
研究実績の概要 |
プラズマが接触する固定壁付近には境界層 (シース) が形成される.プラズマ物理学では Euler-Poisson 方程式を用いた形式的な議論により,シースが形成されるための条件として Bohm 条件が提案されている.この条件は,正イオンが極超音速でプラズマ領域からシース領域に流れ込む必要があることを意味する. 電子と単一種類の正イオンで構成されるプラズマについては,1950 年頃に H. Bohm により Bohm 条件が導出されている.一方,工学で応用されるプラズマの多くは,電子と複数種類の正イオンが混在する多成分プラズマであり,1995 年に K.-U. Riemann はこの多成分プラズマに対して一般化された Bohm 条件を導いている. 多成分プラズマの運動は,Euler-Poisson 方程式によって記述される.また,シースは定常的な境界層と観測されるため,数学的には Euler-Poisson 方程式の定常解であると理解できる.本研究課題では,この定常解の数学解析を通して,シースに関する数学理論の構築を目指している.これまでの代表者の研究で,一次元半空間上で Euler-Poisson 方程式の定常解の存在と安定性が,一般化された Bohm 条件下において証明されていた.ここで,一次元半空間上で構成された定常解を多次元半空間に埋め込むと,一次元的な流れを持つ平面定常解となる. 本年度は,多次元半空間上において平面定常解を解析し,一般化された Bohm 条件は平面定常解が時間的に漸近安定であるための十分条件であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、次の四つの課題を毎年ひとつずつ解決していく計画であった.本年度は計画通り、【研究 1】を解決できた. 【研究 1】多次元半空間における多成分プラズマに対する平面定常解の安定性解析 【研究 2】単一種類の正イオンからなるプラズマの摂動半空間上の解析 I: 渦なし定常解の構成 【研究 3】単一種類の正イオンからなるプラズマの摂動半空間上の解析 II: 渦なし定常解の安定性 【研究 4】摂動半空間における多成分プラズマに対する渦なし定常解の存在と安定性
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、上述の【研究 2】に取り組む.具体的には,半空間の摂動として与えられる摂動半空間で,渦なしの流れを持つ定常解の一意的存在を示す.渦なし条件を仮定すれば,正イオン速度はスカラーポテンシャル関数の勾配で記述でき,運動量保存則は超越方程式に変形される.また,この超越方程式より,正イオン密度をポテンシャル関数および電位で 表現する関係式が得られる.最終的に,定常 Euler-Poisson 方程式はポテンシャル関数と電位のみを未知関数とする非線形楕円型方程式系に帰着できる.帰着した楕円型系の可解性は,最大値の原理による各店評価および Schauder の不動点定理を組み合わせて証明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国で開催された国際研究集会「Recent development of conservation laws and mathematical fluid dynamics」に参加するための渡航費を先方が負担することになり,繰越が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
新たに開催が決まった国際研究集会「Workshop on Hyperbolic Conservation Laws and Related Topics" in honor of Prof. Tai-Ping Liu's 70th birthday」の渡航費に充てる.
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