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今年度は，これまで扱っていなかったフリクション付きスリップ境界条件下におけるストークス方程式の多重度のある固有値に対するアダマール変分公式の導出について研究を行った．
本研究においては，まず前提として同境界条件下におけるストークス方程式の可解性と解の正則性の考察が必須であるが，これに関しては先行研究であるAmrouche-Rejaiba (2014)とTani-Nakano (2011)で得られた結果を用いて解析を行うことが可能であった．
一方，変分公式の導出において重要となるのが，固有値と固有関数の領域依存性の解析であり，その点においては．ディリクレ境界条件の場合を考察したJimbo-Ushikoshi (2015)にはない，スリップ境界条件特有の問題が生じる．具体的には，固有値の領域依存性の解析においては，ミニマックス法を用いた解析が有効であるが，その際に，同境界条件を課した場合の方程式に対するレイリー商の領域依存性の解析をする必要がある．スリップ境界条件に対するレイリー商は，境界上の積分を含んでおり，領域依存性を解析するためには境界上における近似固有関数の領域依存性を表すパラメータに関する一様評価を改めて構成する必要があった．実際に，同境界条件下におけるストークス方程式の双一次形式のcoercivityと，変数変換を用いたソボレフ・ノルムによる双一次形式の評価により，一様評価の導出に成功した．上記で得られた一様評価を用いて，固有値と固有関数の領域依存性の解析を行った．以上の結果を論文としてまとめ，現在投稿準備中である．
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