環状高分子の立体構造やDNA の組み換えを研究する観点から、制限された空間内の格子結び目を考えることが有効である。高さのみが制限された領域(スラブ)においては、既に格子結び目の配置や最小の長さに関して結果を得ていた。本年度は高さだけでなく幅も制限された領域(チューブ)に入る格子結び目に関して以下の結果をまとめ、専門誌への掲載が決定した。また、国際会議において、化学への応用を見据えたグラフに対する数学的な命名法と数え上げについて発表を行った。 結び目がある大きさのチューブに格子結び目として入ることと、trunkと呼ばれる不変量がチューブの大きさで制限できることとが必要十分であることを得た。これにより、スラブの場合とは異なり、どんな大きさのチューブに対しても、そこに格子結び目として入らない結び目も無限個存在することが示された。特に、非自明な結び目が入るような最も小さいチューブである(2x1)チューブに関しては、さらに細かく調べている。まず先に述べた必要十分条件により(2x1)チューブに格子結び目として入る素な結び目は2橋結び目であることがわかる。2橋結び目を(2x1)チューブ内の格子結び目として実現するために必要な最小の長さ(最小ステップ数)を決定するアルゴリズムを与え、実際10交点以下の2橋結び目に対して最小ステップ数を決定した。また、(2x1)チューブ内での最小ステップ数に対して、交点数の1次式による上界と下界をそれぞれ与えた。
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