研究最終年度であった29年度は,Vizing予想へのアプローチを目指し,支配数の概念に対して多角的に研究を行った.特に,多様な支配数的不変量を統一的に表現することに成功したため,いくつかのVizing予想に関連する予想も含めて同一の手法で研究を行えることになった.この成果の中で,超グラフの被覆数と関連する全支配数や,differentialというグラフの不変量と双対関係のあるローマ支配数の一般化に当たる不変量を提案した.この成果はVizing予想への貢献だけではなく,支配数の研究全体の見直しに繋がることが期待される. 支配数の辺除去に関する臨界性については,平面グラフに限定した場合には強い制約が見られ,その結果位数が非常に小さいものに限られることが判明した.これは,平面グラフに限ってVizing予想を考察する場合,臨界性の兼ね合いから位数が小さいグラフのみを対象とすれば良いことになり,研究の見通しが非常に良くなることを意味する. また,グレブナー基底を用いた代数的手法に着目することによって,支配数の臨界性とVizing予想の繋がりがより明確になった.残念ながら現在までにその観点からのVizing予想の進展はないが,同様の手法を用いてSeymour予想という有向グラフの問題に新たなアプローチ方法を見出すことができた. 研究期間全体を通じて,当初の想定を大幅に超えた支配数に関する結果が得られた.それらを処理するための研究に時間を費やすことになり,最終的にVizing予想に直結した研究の進展が滞ってしまうことになったが,支配数の研究全体に大きく寄与できたと考えられる.したがって,本研究で得られた様々な定理を基にすることで,今回至らなかったVizing予想の解決を目指した研究を継続して実施する予定である.
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