研究課題
銀河宇宙の最も基本的な構成要素である星は、星間雲の重力収縮により生じた降着円盤の中で誕生することがわかっている。しかし、降着円盤が中心星にガスを落とすには膨大な角運動量を散逸させる必要があり、その肝心な散逸メカニズムは様々な提案はあるものの実は確定しておらず大きな問題として取り残されている(角運動量問題)。本研究では、円盤の異なる進化段階における散逸量を近赤外線輝線の高分散分光から定量的に推定し、生成中の星の各種物理量との相関をもとに、角運動量問題の解決への手がかりを得ることを目的とする。ターゲットは、われわれ独自のリストでダスト円盤の進化段階が明らかになっている中質量星のうち、WINEREDで観測可能なJバンドで12等までの天体を選択し、パラメータをまとめた。その際、サンプル数が合計で100以上になるように、また異なる進化段階にある星がまんべんなく選択されるように、多数の文献を詳細に調査しまとめた。そして、京都産業大学と共同開発した近赤外線の高分散分光器「WINERED」を用いて、独自に進化段階を定めた中質量星についての分光観測を行っている。初年度は、原始惑星系円盤がまだ十分に残っている若い(約100万年)天体に集中した。2年目の平成27年度は、円盤消失間際の天体の観測円盤の寿命(約1000万年)近くの年齢の星生成領域(NGC 7160)の観測を進めた。このような年齢では多くの星が既に円盤を失っているが、その中でもまだ完全な円盤を持つ星や外側の円盤のみを持つ星、全く持たない星など大きな多様性に富み、この段階でこそ星の角運動量散逸に最も影響を与える要因を見極められる可能性に着目した。その結果、WINEREDがカバーする可視光から近赤外線にかけての波長域 (0.9-1.35um) において星と質量降着やアウトフローの相互作用を起源とする数多くのラインが検出された。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画よりも十分に質量の小さい中質量星(質量で約2太陽質量)までの分光データの取得に成功したため。
最終年度は、中間年齢の天体の観測幅広い年齢におけるサンプルを完全にするため、円盤寿命の半分程度の年齢(約300-500万年)の星について観測を進める。そして、最終的に、星・円盤の時間進化に伴う両者の相互作用の時間進化を、サンプル全体の結果から議論する。同時に、環境依存性の有無も含めて詳細な考察を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
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