研究課題
平成26年度には明るい太陽型星をターゲットとした測光サーベイとこれまでに得られている測光データを用いたX線で明るい太陽型星の周期解析を行った。また、これに加えてケプラー宇宙望遠鏡のアーカイブデータを用いた太陽型星におけるスーパーフレアの統計的性質の解析を行った。明るい太陽型星をターゲットとした測光サーベイ観測では、既に構築済みだったVバンドのサーベイを平成23年度から実施しているため、これを継続するとともに、サーベイ自体を拡張する形でBバンドのサーベイカメラの増設および多色測光に対応した解析パイプラインの開発を行った。Vバンドのデータはすでに3-4年分程度あるため、いくつかの活動的な太陽型星については自転周期を求めるには十分なデータがあるため、本研究で必要な測光精度に達しているかどうかの確認を行う目的で、自転周期の知られている天体について、その周期が検出できるかどうかのテストを行った。さらに、サーベイ観測の副産物としてYSOやいくつかのB型輝線星の突発的な増光や周期的な変光を検出することができた。ケプラー宇宙望遠鏡のアーカイブデータを用いた研究では、これまで解析されていなかった時間分解能1分のデータを用いて、太陽型星における継続時間の短いフレアの検出に特化したアルゴリズムの開発とそれによって検出されたフレアの統計的な性質を調べた。約4年分の1500個の太陽型星のデータから23星で187個のフレアを検出し、太陽フレアとこれまで知られていた「スーパーフレア」の中間の規模のフレアにおいても、フレアのエネルギーごとの発生頻度分布や自転周期ごとの発生頻度分布は同じ傾向を示すことが分かった。また、高い時間分解能を生かし、フレアの継続時間とフレアのエネルギーの間の相関を調べたところ、継続時間はエネルギーの1/3乗に比例することを発見した。
2: おおむね順調に進展している
測光サーベイについては所属機関の変更に伴う設置場所の変更による一時的な観測中断はあったものの、サーベイシステムやパイプラインの開発、および観測そのものは順調に進んでいる。移設の前後でのデータの均一性についても問題ないことが確認できた。ただし、Bバンドカメラはサーベイシステムやパイプライン自体は完成したものの、カメラ本体の納品および設置が年度末にずれこんだためその性能評価にまでは至らなかった。ケプラーなどのアーカイブデータを用いた研究については、高時間分解能データの結果を発表できたほか、ケプラーの全データを使った太陽型星の活動性に関する研究も順調に進んでいる。
サーベイ観測については平成26年度に追加したBバンドカメラの性能評価が平成26年度中には完了しなかったため、平成27年度の早期にはこれを完了させる予定である。また、Vバンドのデータについてはすでに周期解析ができる段階まで蓄積されていることや、長期的な活動性の変化の兆候がとらえられている天体もあるため、平成26年度に行った高分散分光観測の結果と測光的に求めた周期との比較や、さらなる高分散分光観測による活動性の変化の追跡も併せて行う予定である。ケプラーなどのアーカイブデータを用いた研究では、ケプラーの全データを使ったフレアの統計的な性質の解析や天体の活動性の解析を進めているが、フレア等の活動性の研究をするうえで黒点による変動の統計的な性質がより本質的であることが分かってきたので、今後は黒点による変動とフレアの両方の統計的な性質を合わせて解析・研究を行う予定である。
Bバンドのサーベイ観測用カメラの納入が年度末の3月に遅れたため。
4月に繰り越し分からBバンドのサーベイ観測用カメラの支払いを行い、翌年度分として請求した助成金は当初予定通り使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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