研究課題
平成27年度は太陽型星のスーパーフレアの起源と考えられる太陽型星の巨大黒点に関する研究を、ケプラー宇宙望遠鏡のデータおよび本研究で作成した広視野測光サーベイシステムを用いて行った。ケプラー宇宙望遠鏡の測光データを用いた研究では、太陽型星における巨大黒点の発生頻度に関する統計的研究を行った。太陽と同程度の自転周期(25日)を持つ星においても、スーパーフレアを起こすために必要な太陽表面積の1%(最大級の太陽黒点の約10倍)程度の面積の巨大黒点を持つ星が存在し、星の数および観測期間から推定したそのような巨大黒点の発生頻度はおよそ数百年に1回であることが分かった。また、前年度までの研究による太陽型星におけるスーパーフレアのデータと巨大黒点の統計的データを組み合わせることで、黒点面積ごとのスーパーフレアの最大エネルギーや発生頻度を調べた。これらのデータと太陽における黒点面積ごとのフレアの規模や発生頻度とを比較することで、太陽型星における巨大黒点の面積とスーパーフレアの頻度や最大エネルギーの相関は、太陽における黒点面積とフレアの頻度・最大エネルギーの相関と同じであることが分かった。これは、太陽型星のスーパーフレアと太陽フレアが本質的に同じ物理機構に基づくものであることを示唆する。広視野測光サーベイによる研究では、これまでのVバンドに加えて、Bバンドカメラを導入して観測を行った。特に、ROSAT衛星によってX線が検出されている活動的な太陽型星については、測光サーベイのデータから自転による変光が検出され、同時期に行った岡山天体物理観測所の188㎝望遠鏡による高分散分光観測から、変光周期と矛盾しない自転速度を持つ天体であることが分かった。また、測光観測による変光の振幅から推定される黒点の面積は分光観測によるカルシウムの吸収線の深さから推定した黒点面積と矛盾しないことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
ケプラー宇宙望遠鏡のデータ解析では、フレアの原因となる黒点による変光に着目した研究を開始した。変光から黒点の面積や位置の時間変化を追跡する手法を開発し、それを用いて比較的大きな黒点を持つ天体での黒点の時間変化の解析が行えることが確認できている。ケプラー宇宙望遠鏡のグループが公開している光度曲線のもととなるデータ処理パイプラインに一部問題があることが明らかになったが、本研究で解析を行っている天体のデータには大きな影響はないことを確認した。より詳細な確認は平成28年度に公開されるデータを用いて行う予定である。測光サーベイ用のBバンドカメラの故障により多色での観測が行えない期間があったが、Vバンドカメラの観測は中断なく行えたため、大きな黒点を持つ星における自転周期や黒点面積の時間変化を追跡する研究には大きな支障はない。
引き続きスーパーフレアの原因となる太陽型星の巨大黒点について、ケプラー宇宙望遠鏡のデータと測光サーベイ観測による研究を行う。ケプラーのデータを用いた研究では、太陽型星の巨大黒点とフレアの両方の統計的データが得られているが、この結果と黒点の面積や位置の時間変化を追跡する手法による解析結果を組み合わせることで、黒点の時間変化とスーパーフレアの間にどのような関係があるか、スーパーフレアを起こす巨大黒点はどのような性質を持つのかを明らかにする。測光サーベイによる研究では、既に観測済みの約4年分のデータを用いて、巨大黒点を持つ星のおける変光振幅や自転周期ついて各シーズンごとの解析を行い、黒点面積や出現緯度の長期変化を解析する。特に高分散分光観測を行った天体については、測光観測から推定した黒点の面積や出現位置を基にして光球吸収線の線輪郭のモデル計算を行い、分光観測で得られたデータと比較を行う。これにより測光観測から推定した結果の検証やカルシウムなどの彩層吸収線の強度との相関を詳細に解析する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 67 ページ: id.85 (10 pp.)
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Earth, Planets and Space
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10.1186/s40623-015-0217-z