研究課題/領域番号 |
26800100
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 啓一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00503880)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 光学赤外線天文学 / 理論天文学 / 輻射輸送 / 超新星 / 恒星進化論 |
研究実績の概要 |
本年度は、Ia型超新星と重力崩壊型超新星の双方について理論・観測的研究を推進し、恒星・連星進化研究との融合を試みた。 「恒星・連星進化からのアプローチ」:Ia型超新星の白色矮星+恒星モデルにおいて、伴星が超新星に巻き込まれることによる観測的帰結を流体・放射計算により明らかにした。IIb型超新星SN2011dhについて、ハッブル望遠鏡を用いた紫外線観測により理論から予想されていた伴星の候補を発見した(これまでで2例目)。 「超新星爆発・突発現象の観点からのアプローチ」:Ia型超新星のモデルとして、連星白色矮星の衝突の流体シミュレーションを行った(投稿中)。低光度GRBの流体モデル計算を行い、その観測可能性などを広く議論した(投稿中)。Ia型超新星で爆発的に作られる不安定元素からの高エネルギー放射の研究を推進し、近傍で発生したSN 2014JからIa型超新星として初めてガンマ線放射の検出に成功した。以上と並行し、銀河系内の超新星残骸および系外超新星の観測的研究を推進している(出版論文多数)。 「周辺環境からのアプローチ」:IIn型超新星の観測データから、放出された物質の質量および爆発した親星の質量の見積もりを行った。Ia型超新星親星システムからの質量放出に伴う星周物質の理論的研究および観測的研究を推進した。 「銀河化学進化や宇宙論的研究への応用」:宇宙で最初に作られたと想定される大質量星からの恒星風に伴うダスト形成の理論計算を行った。GRBに伴う超新星の性質を用いた宇宙論への応用手法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
恒星・連星進化からのアプローチ、超新星爆発・突発現象の観点からのアプローチ、周辺環境からのアプローチ、銀河化学進化や宇宙論的研究への応用のそれぞれの項目で研究が大きく進展した。特に、「ハッブル望遠鏡を用いた超新星伴星候補の発見」「INTEGRAL望遠鏡を用いたIa型超新星からの初めての不安定元素起源の高エネルギー放射の検出」「すざく望遠鏡を用いた近傍超新星残骸の白色矮星親星質量の確定」についてはプレスリリースを行い、新聞・インターネット記事等に掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の課題を引き続き推進する。特に、それぞれの課題をより深化させるとともに、課題間の融合および周辺領域への研究内容の課題に力を入れる。「恒星・連星進化からのアプローチ」においては、特に連星進化からどのような観測的帰結が得られるかを精査する。「恒星・連星進化からのアプローチ」においては、Ia型超新星の爆発・元素合成理論研究をさらに推進するとともに、重力崩壊型超新星の種々の未解明問題を解決するための観測手法の開発を視野に入れた理論研究を推進する。また、すばる望遠鏡などでの観測が順調に進んでおり、その解析を進める。「周辺環境からのアプローチ」は平成26年度に理論・観測双方から大きな進展があり、新たな課題が浮き彫りになっている。特に、高分散観測データから星周物質質量・分布に制限をつけるためのモデル計算、紫外線から赤外線にわたるより精密な輻射輸送計算などである。「銀河化学進化や宇宙論的研究」についても、現在いくつかのアイデアを試行中であり、これを推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2015年度初頭にいくつか海外で研究会出席の予定があるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究会出席のための海外渡航旅費。
|