研究課題/領域番号 |
26800103
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
内海 洋輔 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (40700018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 観測的宇宙論 / 弱重力レンズ銀河団探査 / すばる望遠鏡 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではすばる望遠鏡用超広視野 Hyper Suprime-Cam (HSC) で得られた,大規模な天域の観測に対して弱重力レンズ解析を適用し,宇宙の質量構成要素で第一の割合を占めるダークマターをトレースすることができる弱重力レンズシグナルのみから銀河団を探査することを目標とし,データの取得,画像解析手法の評価,および分校観測による探査とのクロスチェックを通して検証し,宇宙論への応用の道を切り拓くものである. HSC は2014年から実運用が開始され,2015年は安定的にデータが取得された.本研究課題を遂行するために当初予定していた50平方度の観測領域は,2014年度までで単色の10平方度の撮像がなされ,2015年度は HSC の広帯域フィルター5色全てで取得がされた. 先行的に試験観測で得られたデータをもとに銀河の形状測定を行い,二種の異なるパイプラインの比較を行って計測の妥当性の評価を実施した.この結果を使い重力レンズ解析を実施することでもっともらしい質量面密度マップを得ることに成功した.得られた質量面密度マップを評価したところ,系統誤差が十分小さい一方で天体からの信号の検出に成功しており,解析手法が妥当であることが確認できた. 本観測領域は flux limited (R<20.6) の分光サンプルがある.本重力レンズ解析で検出し得る質量要素に対応する銀河のうちほとんどが観測できているので,この分光サンプルから質量面密度マップを構築し相互相関関数をとることで,マップ中のピークのみならず,全体として銀河の分布と質量の分布が整合するかどうかの確認作業を行い,論文としてまとめる準備を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSC を用いた弱重力レンズ解析による質量面密度マップの構築手法の確立については一定のめどが立ち,実データと比較を始めた.当初予定では S/N の高い銀河団のみを比較する予定であったが,無バイアスな分光銀河サンプルが非常にパワフルであることに気がつき, S/N の低い信号全てを含んだ形での研究が行えるようになった.実際にこの比較研究を通じて当初想像していなかった銀河進化に対する知見を得ることができて論文化に向けて準備を行っている. また同一領域における弱重力レンズ銀河団ピークに対する研究にも貢献し,Miyazaki et al. (2015) として出版された. 本研究を通して得られた HSC データに対する知識を生かして,近傍矮小銀河の研究にも参加し,観測データ取得後ただちにデータ解析を実行し,約半年でレター論文として出版することに貢献できた.Okamoto et al. (2015)
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今後の研究の推進方策 |
前述したとおり,銀河進化に対する新しい知見を得ることができたので,まずこの結果について論文化を目指す.そのために共同研究を実施している Harvard Smithonian Center for Astronomy を訪れ,Margaret Geller のグループと議論を進めながら集中して論文化を目指す. 現在解析しているのはおよそ4平方度という小さい領域であるが,今後は数年以内に50平方度に拡大されていくので,そのデータを扱い,同じく分光データと比較していくことで私たちの理解にほころびがないかどうかを検証していく.また当初予定していた弱重力レンズ探査によって見出されたピークの分光学的検証,探査効率,完全性の評価を行い,銀河団カタログの作成に取り組んでいきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度末に実施する予定だった共同研究機関への海外出張を,当初予定より延期して2016年4月としたたため,その分の予算を繰り越すことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
変更した予定通り2016年4月にハーバードスミソニアン天体物理学センターに2週間程度滞在し,議論を重ね論文化の準備を行う.
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