研究課題/領域番号 |
26800106
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
武藤 恭之 工学院大学, 公私立大学の部局等, 助教 (20633803)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 惑星形成 / 円盤・惑星相互作用 / 電波天文学 / 赤外線天文学 / 直接撮像観測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最新の観測データに基づき、原始惑星系円盤の典型的な描像を探ることである。 平成26年度の主な実績として、次の2つの研究を挙げたい。まず第一に、チリにあるESO (European Southern Observatory)の8メートル望遠鏡VLT (Very Large Telescope)による、HD 100546周囲の原始惑星系円盤の観測に関する成果を挙げる。本観測によって、この星にある10木星質量程度の低質量伴星候補天体の存在を確認し、また原始惑星系円盤にはスパイラル状の構造が存在することが初めて明らかになった。このスパイラル状の構造について、密度波理論を用いたモデルフィットを行った結果、この円盤が比較的温度が高く、またスパイラル構造の起源は、上記の伴星候補天体とは異なっている可能性があることが示唆された。このことは、円盤が力学的に活発な状態にあり、今回直接撮像によって受けられたもの以外に、他の惑星も出来ている可能性を示唆しているかもしれない。本研究の成果は、雑誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された。第二に、HD 142527周囲の原始惑星系円盤について、ALMA望遠鏡Cycle 0観測の結果をもとに、円盤のガス・ダスト分布に関する詳細なモデルを作成した。その結果、この系では、ダストの量が多い場所でのガス・ダスト比は1に近く、全体としてもガスの量が減っているという可能性が示唆された。この結果は、現在Publications of Astronomical Society Japan誌に投稿中である。 他にも、円盤内のギャップ生成メカニズムと、そのHL TauのALMA長基線観測への応用や、すばる望遠鏡で得られた観測結果の解釈などを、共同研究で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、原始惑星系円盤観測の解釈に関する研究や、原始惑星系円盤における円盤と惑星の重力相互作用に関する研究など、いくつかの異なるテーマに関する共同研究について、それらの成果が論文として出版された。また、平成26年度中に投稿した論文が、平成27年度中に出版される見込みもあり、これまでの研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、観測と理論に基づきながら、原始惑星系円盤の描像を明らかにする研究を行っていきたい。平成27年度の初頭に、Gemini South望遠鏡において、新しい観測装置GPIを用いた原始惑星系円盤の観測を行った。このデータの論文化をまずは進めていきたい。また、平成27年度初頭にあったALMA Cycle 3の観測提案公募についても提出を行っている。提案が通り、観測データを取得することが出来れば、その解析を進めていきたい。 理論的な研究に関しても、円盤・惑星相互作用の理論的研究に関する共同研究をさらに深めていくとともに、円盤内の力学過程から得られる観測的示唆に関する研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中の論文の出版が4月以降になると見込まれ、今年度支払い予定であった論文投稿料を、来年度に支払う必要が生じた。また、当初の研究計画の中で予定していたALMAサイクル1観測の結果が未だに配信されない状況であるため、データ解析に必要なディスク等の機器の購入を、来年度購入予定であったワークステーションと併せて行うこととする。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額となる約40万円のうち、20万円程度が論文投稿料となる見込みである。残り額は、大容量ハードディスクなど、主に計算機関連機器に使用する。
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