研究課題/領域番号 |
26800108
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
藤井 通子 国立天文台, 理論研究部, 特任助教 (90722330)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 星団 / 星団形成 |
研究実績の概要 |
Smoothed particle hydrodinamics (SPH)法を用いて、乱流を持つ分子雲を初期条件とした流体計算を行ない、その結果に基づいて、分子雲の密度に依存した星形成効率を仮定してガス粒子を星粒子に置き換え、N体計算でその後の星団の力学進化を追った。本研究では星形成自体を扱うことはできないため、他の研究や観測の結果を利用して密度に依存した星形成効率を仮定し、その後のN体シミュレーションを続け、形成した星団が観測されている星団を再現できることを示した。また、観測されている高密度の星団が形成されるためには、ガスの密度が高い領域では星形成効率が50%を超える必要があることがわかった。 次の段階として星形成効率を固定し、分子雲の質量、密度などの初期条件を変えて同様のシミュレーションを行い、分子雲の初期条件と形成する星団の関係を調べた。その結果、近傍のスターバースト銀河で典型的な高密度かつ大質量の分子雲からは、天の川銀河では稀にしか見られないがスターバースト銀河に特徴的でよく見られる若い高密度大質量の星団(young massive cluster)が形成された。一方、天の川銀河で典型的な分子雲の初期条件からは、古典的な散開星団やOBアソシエーションが形成された。これは、これらの銀河で星形成過程に違いはなく、分子雲の状態が形成する星団を決定していることを示唆している。また、天の川銀河に存在する若い高密度大質量星団は、分子雲同士の衝突など、何らかの理由で高密度かつ大質量の分子雲が形成された結果生まれると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の第一段階である乱流を持つ分子雲を初期条件とするシミュレーションが終了し、分子雲の初期条件と形成する星団の関係を明らかにした。さらに、その研究成果を投稿論文としてまとめ、2報が受理され、さらに1報がまもなく投稿予定であるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、コードの開発、シミュレーションを続ける。現在のシミュレーションコードには星からのフィードバックによってガスが星団から取り除かれる過程が入っていない。そのため、初年度のシミュレーションでは、広い領域で時間差を持って少しずつ星形成を起こすような環境が再現できていない。今後はフィードバックを取り入れて、より現実に近いシミュレーションを行う。さらに、銀河系内での分子雲同士の衝突をモデル化したシミュレーションを行い、天の川銀河では分子雲衝突が高密度大質量星団の形成を促すのかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
10月から年度末まで産休・育休を取得し、研究が中断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
期間を1年延長し、産休・育休の半年分の計画を後ろにずらして使用する。
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