研究実績の概要 |
本研究の目的である銀河円盤内のバーや渦状腕の運動を受けての分子雲での星団形成を取り扱えるように、東京工業大学の斎藤貴之博士のN体/流体計算コード「ASURA」を改良した。ASURAに既に入っているガスの銀河内の遠紫外線によるフィードバック、冷却関数や星からのフィードバック(水素ガスの電離)、ガスの冷却関数の組み合わせをテストし、より良い仮定を調べた。星形成条件に関してもいくつかのパターンを試し、これまで使用していた星形成の条件(局所的な密度から得られるガスの自由落下時間あたりの星形成効率を一定として、星形成効率に応じてランダムにガス粒子から星粒子に変化させる)を用いて、観測結果を再現(全体で星形成効率1~数%、高密度領域で30%程度)できることを確認した。また、平成26年度から行ってきた、星団形成シミュレーションの結果、主に、初期条件と形成する星団の関係をまとめ、論文として出版した(Fujii & Portegies Zwart 2015, MNRAS, 449, 1, 726; Fujii 2015, PASJ, 67, 4, id.5910; Fujii & Portegies Zwart 2016, ApJ, 817, 1, id.4)。 同時に、平成28年度以降に行う予定のシミュレーションに向けて、銀河の初期条件について検討した。最適な初期条件を見つけるためには、銀河全体のシミュレーションが必要となるが、計算コストを減らすため、まずはガスを含めず、ダークマターと星のみで銀河円盤を再現し、N体シミュレーションを行った。銀河円盤、バルジ、ダークマターハローのパラメータを様々に変えて、天の川銀河に近いバーや渦状腕構造を再現できるパラメータ範囲を特定した。
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