最終年度は、まず、昨年度までに行った円盤銀河のシミュレーションについてまとめた論文を投稿し、その論文は査読付き雑誌に受理された。次に、これまでに行ってきたシミュレーションから最も天の川銀河に近いモデルを選び、より多くの粒子を用いて再計算を行い、2018年4月25日に予定されている位置天文衛星Gaiaのデータリリース2に向けた模擬観測を行った。その結果をまとめた論文は、現在、投稿準備中である。その後、銀河全体をガス入りで扱うためのコード開発を行った。天の川銀河全体をガス入りで行う計算は、今後、論文にまとめていく予定である。 研究期間全体を通じては、1.分子雲とそこから生まれる星団の関係の解明、2.円盤銀河の力学進化の解明、3.天の川銀河モデルの構築、4.銀河内で星団形成を取り扱える新しいコードの開発を行った。より具体的には、まず、分子雲とそこでの星形成を仮定したシミュレーションを行い、乱流を持つ分子雲が作り出すフィラメント状の構造を初期条件とする星団の形成・進化シミュレーションの手法を確立し、母体となる分子雲と生まれる星団の関係を明らかにした。 次に、1億粒子を用いて、銀河円盤、バルジ、ダークマターハローを全て粒子でモデル化した世界最大規模のシミュレーションで、銀河円盤の力学進化の多様性とその条件を明らかにした。シミュレーション結果は粒子数(分解能)に依存することが知られていたが、これほどの規模で、様々な銀河のパラメータについて、サーベイ的なシミュレーションを行った例は過去になく、査読者からも高い評価を得て、査読付き雑誌に受理された。また、そこで得られた、銀河のパラメータと生じる構造の関係から、天の川銀河に近い銀河を形成する条件を探し、最大80億粒子を用いて、天の川銀河モデルのシミュレーションを行った。
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