白色矮星への降着プラズマ流から放射された熱的X線に加え、これが白色矮星表面で反射された成分を取り込み、白色矮星の質量と半径を独立したフィットパラメータとして持つX線スペクトルモデルを完成させた。「反射」とは白色矮星を照らすプラズマ流からのX線が、白色矮星表面で散乱または吸収・再放射されて再び白色矮星外部へ放射されることを指す。この成分は主に、6.4 keVの蛍光鉄輝線と20 keV付近に現れる、コンプトンハンプと呼ばれる、コブ状のスペクトル構造で卓越する。その強度はプラズマ流から見た白色矮星の立体角、つまり、白色矮星半径に対するプラズマ流の高さを反映する。一方で、白色矮星の重力ポテンシャルはプラズマ流の直接成分のX線スペクトルから得られる、プラズマの最高温度から測定でき、白色矮星の質量と半径の比が決まる。さらに、プラズマ流の高さの絶対値は、重力ポテンシャルをパラメータとして、流体力学から算出で きる。これらを組み合わせることによって、原理的に白色矮星の質量と半径が測定可能になる。 プラズマ流の構造とX線スペクトルモデルはすでに流体力学や既存の熱的プラズマモデル用いてモデル化が済んでいる。一方で、反射成分に関しては、プラズマ流からのX線スペクトルを基にして、モンテカルロシミュレーションを実施することで、今回モデル化を実現した。構築したモデルでは、 白色矮星の質量と半径それぞれ、0.4-2.0太陽質量と2x10の8-9乗 cmの範囲をカバーしている。このモデルによって、白色矮星の質量と半径の測定精度は大きく向上できる。
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