研究課題/領域番号 |
26800114
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
櫨 香奈恵 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50635612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光赤外線天文学 / コロナグラフ |
研究実績の概要 |
系外惑星の精査は、惑星の誕生から進化、多様性、また究極的には地球外生命の兆候にも迫る、人類の宇宙観に関わる重要な研究テーマである。しかし、主星光と惑星光のコントラストが極めて大きいため、コロナグラフという特殊な光学系を開発する必要がある。申請者は現在、この重要課題にアプローチするため、バイナリ瞳マスク方式のコロナグラフの開発を進めており、将来的には、これまでの原理検証実験で得た成果を発展させ、実際の望遠鏡に搭載したいと構想している。申請者が開発研究を進めてきたバイナリ瞳マスクコロナグラフなら、実際の望遠鏡に搭載する際の難点を克服し、高コントラスト観測を実現できる可能性は大変高いと考えている。そこで本研究における目標を、汎用望遠鏡搭載コロナグラフを実現するための、1) 新しいリング瞳マスクコロナグラフによる可視光高コントラスト実証実験、および 2) 得られたコントラスト性能を用いた惑星検出能力のシミュレーション、と設定した。平成26年度では特に、バイナリ瞳マスクの一種である中心遮蔽対応型リングマスクを制作した。マスクは 30 mm × 30 mm の石英基板の片面に、開口部口径 10 mm としてアルミニウム蒸着薄膜にて構築し、基盤の両面に広帯域反射防止コートを施した。そして、このマスクに関する基礎的な評価を行った。また、3種類の瞳遮蔽対応型マスクを用いた可視光原理実証実験をおこない、系外惑星の赤外観測における要求を満たす高コントラストを実証した。この結果は、査読論文(Haze et al. 2015, PASJ)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽系外惑星の直接観測という重要で挑戦的な課題に向け、本研究における2年間の目標を、汎用望遠鏡搭載コロナグラフを実現するための、1) 新しいリング瞳マスクコロナグラフによる可視光高コントラスト実証実験、および 2) 得られたコントラスト性能を用いた惑星検出能力のシミュレーション、と設定した。それに向けた平成26年度の取り組みは主に、中心遮蔽対応型リング瞳マスクコロナグラフの開発であった。これまでの原理実証で用いてきたコロナグラフマスクの開発成果を踏まえ、実際の望遠鏡に搭載する際にコントラスト性能を悪化させる副鏡による遮蔽を考慮したデザインの「リング瞳マスク」を新たに製造開発した。さらに、3種類の瞳遮蔽対応型コロナグラフマスクを用いた初めての可視光実証に成功し、広い範囲(6-23λ/D:λは観測波長、Dは望遠鏡口径)で5桁~6桁の高コントラストを得た。これにより、赤外域で系外惑星を観測するための要求を満たすコントラストを実証することができた。以上のように実証開発が着実に進んでいることから、研究の目的に沿っておおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
コロナグラフの大敵と考えられていた望遠鏡の副鏡等による瞳遮蔽の影響を回避したデザインかつ、広視野を実現する、より実際的なリング瞳マスクの概念を実証する。平成27年度では特に、これまで開発を進めてきた、リング瞳マスクコロナグラフの実証実験、が大きな柱となる。これまで開発した実験系に、新しい瞳マスクを導入したコロナグラフの世界初の性能評価をおこなう。このコロナグラフ実験によって得られた結果と、地球近傍にある星についての情報を合わせて、SPICA やTMT のMICHI で観測した場合の惑星観測能力などをシミュレーションし、比較する。以上の実験結果やその解釈を通して、系外惑星の観測能力を大きく高めることを目指す。挑戦的な開発研究であるが、昨年度までに確立した手法をベースとして、万全の体制で臨むことで、着実に消化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画はおおむね順調に進んでおり、次年度使用額は計画通りに執行した端数である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は端数であり、計画通りに進んでいる為、使用計画に変更はない。
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