研究課題
金などの重い元素の半分は速い中性子捕獲を伴う元素合成過程によって作られたとされている。超新星爆発などの中性子が大量に存在する環境で中性子捕獲とβ崩壊を繰り返しながら非常に中性子過剰で短寿命な原子核が作られ、最終的に重い元素が形成される過程である。元素合成を理解する上で必要となる中性子過剰核のβ崩壊半減期と核構造との関連性を調べることが目的である。昨年度に引き続き、中性子過剰Zr同位体のβ崩壊実験のデータ解析を行っている。5層にスタックした両面ストリップシリコン検出器内でβ崩壊し、このシリコン検出器でのエネルギーと時間情報からβ線放出位置を同定する必要がある。1枚のシリコン検出器に複数箇所当たった場合もあるため、各面でのエネルギー校正を丁寧に行いβ線通過位置を決めるプログラムを開発した。5層のシリコン検出器を使った3次元での粒子軌跡の分析をした結果、想定していなかった頻度で後方へと散乱される現象が見つかった。β線が放出されたストリップ内での移動距離が短くエネルギー損失がDiscriminator回路の閾値を超えられない場合も少なくない。現在、閾値を超えられなかったと仮定した場合にβ線放出位置を予測するプログラムを生成中である。β線の飛跡パターンを分類し簡単で頻度が高いものに対して、β線放出位置を導出するプログラムを専用に用意する予定で、数パターンのプログラムはほぼ完成した。平成28年度にβ線放出位置導出プログラムを完成させる。β線放出位置の導出を簡単に行った解析を用いて、104Zrと106Zrの第1励起状態の寿命測定の結果を出版した。β線をプラスチックシンチレーターでγ線を時間分解能が良いLaBr3(Ce)結晶で捉え、その時間差で寿命を決め変形度を決めた。以前我々が第1励起状態のエネルギーから104Zrが最大の変形度であると推論していたが、今回最も直接的な実験手法により確認できた。
3: やや遅れている
β崩壊を測定するシリコン検出器の解析は時間がかかると考えていたが、想定以上にβ線の飛跡パターンは複雑であったためその理解と対応するプログラム生成に時間が必要であった。そのためスケジュールとしては当初予定よりもやや遅れているが、着実に理解および解決はされており研究としての進捗は順調である。
平成28年度は、β線放出位置導出プログラムを完成させ、β線半減期の結果とβ遅延γ線から核構造に関する結果を得ることを目指す。
中性子過剰核Zr同位体を多層の両面ストリップ型Si検出器に埋め込みβ崩壊を測定している。β線の振る舞いを解析した結果、当初想定以上に複数のストリップで信号を検出している現象が見つかり、さらに後方散乱が高頻度で起こっていることが分かった。したがって、β線のデータは非常に複雑化しておりその解読に時間を要することとなったが、起こっている現象はほぼ把握できた。今後解析手法に反映させ論文発表および会議で発表を行う。
国際会議での発表および論文出版の成果発表のための予算として支出する予定である。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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