研究実績の概要 |
金などの重い元素の半分の起源と言われている速い中性子捕獲を伴う元素合成過程(r過程)に寄与した中性子過剰なZr同位体周辺のβ崩壊半減期と核構造を調べることが目的である。
実験では、中性子過剰Zr同位体及びその周辺のMoなどの同位体は不安定核ビームとして理研RIBFで生成され、様々な核種が同時に供給されるが、粒子識別(陽子数と質量数の決定)をビーム1粒子ごとに行い同時に測定できるようになっている。どの不安定核が崩壊したか決めるために、不安定核ビームは5層にスタックした各1mm厚の両面ストリップシリコン検出器(2次元位置の測定が可能)内に止め、止まった位置でβ崩壊して放出されたβ線を検出する。本課題で開発していた不安定核ビームの停止位置解析プログラムとβ線軌跡導出プログラムが完成し、本来相反する低バックグラウンド化とβ線検出効率向上に成功した。また、不安定核の粒子識別(陽子数と質量数の決定)の解析も改善することにより、従来の解析手法では全く見えなかった114Moからのγ線観測に成功した。
偶々核の中で収量が多いMo同位体へのβ崩壊を解析し、遅延γ線を測定した。特に前回の我々の実験で初めて励起状態を測定した110Moについては新しい回転バンドも綺麗に導出でき、112Moまでは変形した原子核の形状に強い制限が与えられる結果が得られた。新アイソマー探索の結果はInternational Nuclear Physics Conference(INPC2016, 2016年9月アデレード)にて、110Moを含めた結果は韓国物理学会(2016年10月)及び日本物理学会(2017年3月)にて発表を行った。
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