暗黒物質の熱的残存量とミューオン異常磁気能率のずれを同時に説明できる超対称性模型の研究を行い、論文を発表した。超対称性模型において、ニュートラリーノ暗黒物質の初期宇宙での熱的残存量が現在の観測値と一致する典型的なパラメータ領域では、カラーを持たない超対称性粒子が O(100) GeV の質量をもっている。このようなパラメータ領域においては、ミューオン異常磁気能率の理論値と実験値のずれを説明出来る可能性がある。そのようなパラメータ領域を同定し、その大部分が、将来の LHC の高ルミノシティ実験で探索可能であることを明らかにした。
宇宙背景放射の観測から求められたハッブル定数と、近傍宇宙の観測から求められたハッブル定数の値の間に食い違いがあることが指摘されている。このずれを説明する模型として、超対称性模型の枠組みの中で、グラビティーノとアクシーノが1番目と2番目に軽いようなシナリオを提案し、論文を発表した。
昨年度発表した「フラクシオン模型」について、複数の国際研究会において成果発表を行った。フラクシオン模型は、標準模型の理論的問題である、世代間階層性および強いCP問題を同時に解く模型であり、暗黒物質、バリオン 非対称性、ニュートリノ質量、インフレーションといった標準模型を超えた物理が必要とされる現象も同時に説明できる。さらに、フラクシオン模型を超対称性理論の枠組みに拡張した模型を提案し、arXiv に発表した。
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