研究課題/領域番号 |
26800131
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北川 暢子 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 研究員 (20727911)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 飛跡検出器 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
昨年度(平成26年度)に行った、~100平方cmの原子核乾板フィルム(以下フィルム)の全面積の読み出しと60枚のデータを用いた飛跡再構成の流れを、J-PARCのような1GeV未満の低エネルギーニュートリノ反応の検出(大角度の飛跡の検出が必須)に適応させるため、今年度から本格的に稼動し始めた次世代の飛跡読み取り装置HTSを用いた性能評価を行った。 このシステムへの移行の理由としては、旧システムで45度までだった飛跡の検出が、(現時点で)60度の放出角を持つ飛跡が検出可能となったため、低運動量の飛跡も含めた低バイアスのニュートリノ反応の解析が行えることと、約100倍の読み取り速度を持つため、数ヶ月~半年で1000個レベルのニュートリノ反応の解析が可能になったからである。 性能評価には、平均3GeVのニュートリノビームが照射されたフィルムを用いて、全面積の読み出しを35枚行い飛跡の再構成を行った。結果、55度までの飛跡が検出出来ることを確認し、また45度までの飛跡に対しては旧システムと比較して、同程度またはそれ以上の検出効率があることを確認した。これを、2016年3月の日本物理学会第71回年次大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1GeV未満のニュートリノ反応が多く含まれるJ-PARCのビームを用いたニュートリノ反応の研究には、大角度(現時点で60度)まで読み取れる次世代の飛跡読み取り装置HTSの使用が必須である。そのために、今年度はHTSを用いたデータの読み取り並びその性能評価を行い、昨年度に構築した解析の流れを現在照射中のフィルムに蓄積されたニュートリノ反応の検出・詳細解析に実装することを目指した研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
性能評価に用いた平均3GeVのニュートリノビームが照射されたフィルムの1検出器分の読み出しを完了し、100枚近いフィルム中での飛跡の再構成を行い、ニュートリノ反応の検出を行う。このデータを用いて大量のフィルムのデータの取り扱いや大角度の飛跡を含めたニュートリノ反応の検出の流れを再構築し、2016年夏に解析が開始されるJ-PARCでのニュートリノ照射を完了したフィルムの解析に実装し、sub-GeVからmulti-GeVのニュートリノ反応の詳細解析を行っていく。さらに、大統計の物理ランを目指した大量のフィルムの製造のR&Dも行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究の中心が、検出器の作製ではなく解析であったため、主に解析用PCやデータ蓄積用のHDDの購入に使用した。これは、原子核乾板を用いたJ-PARCでのニュートリノ実験を行っている他大学が主に検出器の作製等を担当してくれたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
原子核乾板フィルムを用いたJ-PARCでのニュートリノ実験において、物理結果を出すためには更に大量のフィルムの製作が必要である。それには、現在人が手作業で行っていた部分を機械化する必要がある。次年度は、解析を進めると共に大量フィルム作成のためのR&Dに予算を使用する予定である。
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