研究課題/領域番号 |
26800132
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長縄 直崇 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 研究員 (60402434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子核乾板 / 高分解能 / 超冷中性子 / 量子効果 / 重力 / 短距離力 |
研究実績の概要 |
重力による超冷中性子の量子効果の精密測定および他の中性子の精密実験に使用可能な高分解能の中性子検出器を制作するため、超微粒子原子核乳剤(直径40nmのハロゲン化銀結晶をゼラチン中に分散したもの)とリチウム6やホウ素10等の、中性子を吸収して電離損失の大きな荷電粒子を放出する核種を用いた新しい検出器の開発を進めている。 超微粒子原子核乳剤中にリチウム化合物を添加した検出器およびホウ素化合物を添加した検出器、ホウ素10を蒸着したガラス板に超微粒子原子核乳剤を塗布した検出器を試作し、KURおよびJ-PARC・MLFのBL05において冷中性子を照射した。これにより、予測した反応の発生を確認し、検出原理の確認ができた。また、増感した乳剤を用いた検出器や、検出器の現像段階で現像時間を長くしたものを試験した。これらの方法で飛跡の銀粒子数の線密度(GD)を上昇させることができ、飛跡の認識が容易になる一方、上昇させ過ぎると電離損失の違いによる粒子識別が困難になることが判明した。実験時の条件でのGDからはリチウム6による中性子吸収点の位置決定精度がサブミクロンであることを確認した。今後、処理条件を最適化する。 現在、位置分解能および検出効率の評価を進めている。 蒸着したホウ素を用いた方式では、予想よりも少ない反応数が得られた。今後、蒸着層の安定性等に着目し、原因を調べる。 また、乳剤のゼラチン中に数%含まれる窒素14が中性子を吸収して陽子を放出する。この陽子も検出された。この陽子のバックグラウンドへの寄与を調べる必要がある。窒素を含まないバインダーを用いた原子核乳剤の開発も有効である。また、この窒素14の中性子吸収反応自体、中性子検出法として利用できる。 乳剤層の暗視野光学顕微鏡像の断層画像を取得して画像処理を施し、中性子吸収反応由来の飛跡の認識のためのアルゴリズムの製作を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子吸収材料の選定をし、複数の方式の検出器を試作し、冷中性子を照射して原理の確認とともに個々の方式の特性および問題点を把握した。個別の最適化、問題点の解決を進める段階に入った。
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今後の研究の推進方策 |
ホウ素の蒸着層を利用した方式で、検出した反応数が予想より少ない原因を蒸着層の安定性等に着目して調べる。 窒素14による中性子吸収反応について、バックグラウンドへの寄与の仕方を調べる。 増感条件、現像条件を最適化する。位置分解能および検出効率を導出する。 その後、超冷中性子を照射して試験する。 並行して飛跡の認識アルゴリズムを完成させる。
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