T2K実験および次世代長基線ニュートリノ振動実験で粒子・反粒子対称性の破れの探索を進めていく上で、ニュートリノ反応の系統誤差削減が急務となっている。本研究は、ニュートリノ反応点周りの全荷電粒子のトラックを再構成可能なシンチレーションファイバー前置ニュートリノ検出器のプロトタイプを制作し、検出器が要求性能を持つことを実証することを目的としている。 2016年度は、断面の形状、太さ、クラッドの構造の異なるシンチレーションファイバーを用いてプロトタイプ検出器を6種類作製した。そして、東北大学光理学研究センターで陽電子ビームを照射し、6種類のファイバーそれぞれについて、最小電離粒子に対する換算光量を測定した。その結果、一番光量が少なかった丸型、太さが1.0 mm、シングルクラッドタイプのシンチレーションファイバーでも粒子識別を行うのに十分な光量を持つことを実証した。ファイバー中でのシンチレーション光の減衰長が2m以上あることをLEDを用いた精度の高い測定で確認し、2m程度の長さのシンチレーションファイバーを用いた検出器が実現可能なことも確認した。 2016年度のもうひとつの成果は、ファイバーをビーム入射方向に対して45度傾けて交互に並べることにより、隣合うファイバーの光量比を用いることで、高い位置分解能を実現する手法を考案し、2mm角のファイバーとMPPC(Multi Pixel Photon Counter)を用いてプロトタイプ検出器を作製し、東北大学光理学研究センターで陽電子ビームを照射し、その原理検証を行ったことである。2枚のレイヤーにおいて再構成された位置の差をとることで位置分解能を評価し、MIP換算で垂直入射の際に200μmの位置分解能を達成した。
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